平凡社 世界大百科事典

国家独占資本主義

独占体(市場を独占的に支配している巨大企業)が国家権力・機構と密接に結びついた資本主義経済体制。19世紀末から資本主義はいわゆるレーニンの〈国家資本主義〉論に理論的に反映されることになった。

 第1次大戦後の世界恐慌(管理通貨制度)のもつ意味が重要である。これによって国家は財政国家としての地位を確立し,積極的な景気刺激政策によって失業問題をコントロールできるようになったばかりか,社会福祉政策による体制安定政策を展開しうるようになった。管理通貨体制による国家の積極的政策機能の確立は,資本主義体制の根幹をなす資本と賃労働の関係に対する国家の介入を可能にするが,このような現代国家のもつ階級的性格を国家独占資本主義の成熟の基準とみなす見解も有力である。

 第2次大戦後において,国家独占資本主義はいっそうの変貌を遂げるに至る。一つは,戦後経済の再建を目ざして先進資本主義国間に国際的な協調体制が成立したということである。戦前のブロック経済化の再現を防止するため,貿易自由化を基調とするIMF-GATT体制が成立したのがその具体的内容である。第2次大戦後のこのような国際経済の構造変化は,伝統的な帝国主義論の修正を迫る内容をもっていたが,それに対応して,国家独占資本主義を帝国主義の新しい一段階と規定する理論が登場してきた。東ドイツのツィーシャングKurt Zieschangによって代表されるこの理論は,戦後国家独占資本主義論争を生み出し,日本の学界にも強い影響を与えることになった。

 国家独占資本主義に関するもう一つの現代的論争視点は,国家の階級的性格の変化をめぐる論争である。戦後民主主義の発展と福祉国家としての基盤の確立は,現代資本主義体制における国家の役割と機能を,たんにブルジョアジーの執行機関としての古典的定義によって規定することをしだいに困難ならしめていった。ここに国家独占資本主義と過渡期論争との新しいかかわり方が生じてくる。レーニン以来,国家独占資本主義は資本主義の最高の発展段階という考えが一般的通説となっていたが,このことが直ちに社会主義への移行の条件を形成するのか,資本主義における民主主義の発展と市民階級の国家権力構造への参加と介入によって混合体制としての安定性を強めるか,という二つの基本的な見方の相違が存在しているのが現状である。この意味で国家独占資本主義論争は,現代の社会主義政党の綱領問題に深くかかわりあう問題になっているといえよう。

新田 俊三