平凡社 世界大百科事典

統計地図

対象とする統計の空間的な分布構造がひと目でわかるように,各統計量を一連の記号に置き換え地図上に配置したもの。人口をドット(点)の個数や円の面積に置き換えた人口分布図などが代表例である。統計地図は統計図表と同様,統計情報の視覚的表現方法であり,その特徴は数表と比較すれば明らかであるが,全体的傾向が瞬時に観察できるところにある。数表では,個々の文字としての数値は正確に伝わるものの,全体パターンの観察は困難である。

 数量を数字以外の視覚記号に置き換え表現する試みは,ヨーロッパでは17世紀以降広くみられるようになるが,日本においては明治以後のことである。ドット・マップ,円積図,濃淡図,流線図など,今日みられるごく普通の表現にも,それぞれ改良の歴史が存在している。しかし,日本には輸入学問として入ってきたためか,記号の体系化とその意味性について,いまだ消化しきれない部分が存在している。つまり,既存の形式を単に当てはめるだけに終わり,全体像の明快さに欠ける場合がみられる。

 数量を記号に置き換えるに際しては,記号に対する視覚上の生理的・心理的特性,および数量のもつ基本的意味性との間に調和点を見いだす必要がある。明快な全体像をつくりだすには,その構成部分に視覚上の刺激となる強弱を与えることができる記号を用いる。また,数量は,個々の量の大きさをとおして,それら相互の差異(類似),順序,割合の諸関係を基本的意味としてもっており,記号系列はこれらを表現できるものでなくてはならない。通常よく用いられている大小や濃淡の変化による記号系列は,これらの条件を満たすことができる。

森田 喬