平凡社 世界大百科事典

地位

人々が社会において占める相対的位置。個人が占める地位は,富や権力や威信などの社会的資源が,個人にどれだけ配分されているかによって定まる。権力や威信などは,人々の間に配分の差異があってはじめて意味をもつ資源であるが,一般に,人々に配分される社会的資源の内容や程度には差異が存在する。人々は社会において,さまざまな異なる地位を占めているのである。社会的資源の配分の度合を多次元的な指標として,人々の地位の布置が測定され,地位連関の構造である社会成層すなわち階層構造が把握される。社会的資源の操作的な指標としては,所得,職業的威信(職業の社会的評価),学歴がおもに用いられる。学歴が主要な指標として用いられるのは,知識そのものが,人々の欲求の対象である社会的資源の一つであるということと,現代社会において,学歴がさまざまの社会的資源の獲得に大きく貢献しているということにある。

 社会的資源の配分は,人々の属性や業績を基準としてなされる。用いられる基準の違いによって,属性的地位ascribed statusと業績的地位achieved statusに大別される。前者は,個人の能力や努力に関係なく,血縁,地縁,年齢,性,人種などを基準とするもので,このような属性を基準として社会的資源の配分が行われている社会制度としては,世襲制,カースト制などがある。

 一方,個人の示す業績によって社会的資源が配分されるのは,現代産業社会の特徴とされる。プロスポーツ選手の得る報酬は,明らかに彼の業績に基づいている。しかし,企業における年功序列や男女差別,人脈等々の存在は,現代社会における地位の配分が,属性的要因と業績的要因の複合によっていることを示している。人々は,自己の有する属性や,自己が示す業績によって,地位を獲得したり失ったり,あるいは地位のヒエラルヒー(階層構造)を上昇したり下降したりという地位移動を経験するのである。

渡辺 秀樹
平凡社 世界大百科事典

身分

内婚制がその代表的な事例)を世代を超えて持続するなかでは,それぞれの身分に固有な生活様式が形成され,人々は自己の身分を運命的なものとして受けとめる。

 R.K.マートンによれば,現代社会においては,個人はさまざまな社会システムに参加し,そこで多様な地位を占める。そしてこれらの地位は,相互にある程度隔離(コンパートメント化)されたものとして,人々に観念される。つまり,学校における教師という地位と,地域コミュニティにおける住民としての地位と,草野球における一選手としての地位とが,相互にその行為内容を規定する力は弱い。個人の生活は彼が参加する社会システムごとにコンパートメント化されていると考えることができる。

 一方,中世封建社会に代表される身分制社会においては,個人の身分は,彼の全生活領域における行為を規定する。別の側面からいえば,諸個人が参加する各社会システムにおいて,その成員構成が身分的序列と交差する可能性がほとんどないということである。あらゆる社会的状況において,人々の序列化は固定されており,その相対的な優劣は一定である。もっとも閉鎖的・固定的なカーストから中世的な身分制へ,そして近代の階級へという歴史的な変化として,この概念が用いられると同時に,現代の階層的秩序の比較社会学的分析にも有効な概念として用いられる。それは,身分という概念を核として,地位の配分における属性対業績という尺度,一個人が占める複数の地位(地位集合)の相互の関係における包括性・全体性対個別性あるいはコンパートメント化の度合という尺度,階層的秩序における所与性対変革可能性という観念的尺度などを分析することによって,社会のあり様を検討できるからである。

渡辺 秀樹