平凡社 世界大百科事典

ステアリン酸

化学式CH3(CH216COOH。炭素数が18の直鎖飽和高級脂肪酸。白色葉状晶,融点70.5℃,沸点283℃(17mmHg)。結晶は多形がある。水,ベンゼン,二硫化炭素に難溶,エチルアルコール,エーテルなどには可溶。動植物油脂のグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の一つとして,また蠟の高級アルコール脂肪酸エステルを構成する脂肪酸の一つとして広く天然生物界に存在する。牛脂など常温固体の脂肪中に多く,常温液体の脂肪油中には少ない。工業的には,天然油脂を水素添加により硬化し,それを加水分解して得た脂肪酸混合物から蒸留などによって分離される。工業用のステアリン酸と呼ばれるものにはステアリン酸を主成分とする固体脂肪酸で,パルミチン酸その他の高級脂肪酸を含むものがあり,ステアリンと呼ばれることもある。用途としては,ゴム工業用滑剤など,プラスチック工業における塩化ビニル樹脂の安定剤,可塑剤など,洗剤,乳化剤,セッケン,グリース,ろうそく,バニシングクリームに代表される化粧品など,多くの製品の原料に用いられる。

内田 安三