平凡社 世界大百科事典

鋼板

鋼塊を圧延してつくる板状の材料の総称。鋼板には厚板とそうでない薄板とがある。厚板plateと呼ばれる鋼板はふつう厚さ3mm以上のものをいい,とくに成分と製造の際の温度履歴とが注意深く管理されている。それは,厚板はさらに加工して,寒冷地における天然ガスや原油の輸送管に使用したり,船舶の外板に使用したりするからである。つまり,鋼には一般に低温脆性(ぜいせい)という現象を起こしやすい弱点があって,このため,1930年代には厚板の溶接で建造された船舶が寒冷な海上でつぎつぎに破断沈没するという事故が多発して大問題になったのである。溶接技術の進歩と厚板の材質面での改良とによって,現在ではそのような不安は一掃されている。高圧タンクや圧力容器などをはじめ鋼構造物の重要部材として厚板は多量に使用されている。製造のうえでの画期的な技術開発は,圧延サイクルと加熱冷却サイクルとの結合によって,比較的成分の単純な鋼板の強靱(きようじん)性を著しく改善することのできるコントロールドローリングをはじめとする加工熱処理法に関するものである。

 薄板sheetはふつう厚さ3mm未満のものをいい,自動車用鋼板,家電製品用鋼板,あるいはめっき用などの表面処理鋼板として広く用いられている。自動車用鋼板については第2次大戦後,初めアメリカで,次いで日本において性状に関しての大きな進歩が得られた。成分の管理,熱間圧延における温度管理および冷却の管理などが適切になされることが,冷間圧延をし,焼きなましをして仕上げる製品の性状を優秀なものにするために不可欠なのである。

木原 諄二