平凡社 世界大百科事典

中心柱

維管束植物(シダ植物,裸子植物,被子植物)の茎,根を貫く通道組織系で水分や養分の通道と植物体の機械的支持のはたらきをする。中心柱はファン・ティーゲンVan Tieghemが最初に認めた組織系(1886)であって維管束とそれによって囲まれた髄を含む。維管束は木部と師部から,髄は中心柱の外側の皮層と同じく柔組織からなる。そのため,中心柱のうち維管束の部分だけを区別して維管束系という場合も多いが,中心柱は維管束植物の系統を論じるときに有効である。中心柱の形態と系統に関する説を中心柱説stelar theoryという。この説によると,中心柱は内皮によって囲まれるが内皮のない場合も多い。

 髄の系統的起源と発生には2通りの説がある。一つは,髄は皮層と相同であるという考え方であり,これは裸子植物,被子植物の中心柱について認められている。もう一つは,髄は維管束の一部が柔組織化してできたとする見方であって,シダ植物の中心柱にあてはまる。中心柱が植物の系統を考える上で重要な形質であることは,19世紀から認められていた。20世紀初頭ジェフリーE.C.Jeffreyがそれまで隠花植物と顕花植物に分けられていた維管束植物を,と中心柱の違いによって大葉植物Pteropsidaと小葉植物Lycopsidaに分けて以来,中心柱の構造は維管束植物の分類にとって最も重要な形質と認められるようになった。

 最近の知見も加えて中心柱の進化をまとめてみると次のようになる。古生代の原始的維管束植物の中心柱は髄のない簡単な1本の原生中心柱であったが,ある群から小葉植物が進化し,古生代のものとあまり変わらない原生中心柱をもつようになった。他の群は大葉植物で,シダ類,トクサ植物,裸子植物,被子植物の原始型に分化したが,シダ類では維管束と相同の髄が生じて管状になった維管束に葉隙(ようげき)という穴があいた管状中心柱ができ,トクサ植物,裸子植物,被子植物の3群では原生中心柱がくびれ込んで皮層と相同の髄が生じて真正中心柱,不整中心柱が並行的に進化した。

加藤 雅啓