平凡社 世界大百科事典

シダ植物と顕花植物(両者を合わせて維管束植物という)の体の部分のうち,葉や芽をつける軸状構造の器官である。樹木の幹は主茎が二次肥厚したものでその顕著な例は屋久杉やセコイアの巨木にみられるが,一方シダ植物の根茎のように地中にあって目だたないものもある。先端に花をつける花茎も茎の一種である。茎は根とともに植物体を支持し,根から吸収した水分や無機塩類などを上部の茎や葉に送り,葉で合成された同化物質などを茎や根に移動させるなど,体内物質を移動させる通道の役割をもつ。茎とその上につく葉はあわせて地下茎でも,根の機能も果たす根茎(ワラビ),茎が肥大して物質貯蔵の役目をする塊茎(ジャガイモ),茎が短く肉質の鱗片状葉に包まれた鱗茎(タマネギ)などがある。新しい茎は種子植物では単軸分枝的に腋芽(えきが)がのびてつくられ,シダ植物の多くでは茎頂が二叉(にさ)分枝または二叉状仮軸分枝してできる。トクサ植物では葉間にある側芽がのびて輪生分枝的に枝ができる。茎の外部形態をみると,茎の先端にあって生長・分化の盛んな茎頂,葉がつく部位である節,節と節の間の茎つまり節間などが区別される。

茎の内部構造

茎の内部構造はザクスJ.Sachsによると,表皮系,基本組織系,維管束系に分かれ,ファン・ティガンP.E.L.van Tieghemの区分法では表皮,皮層,中心柱と呼ばれる。表皮はクチクラでおおわれ,気孔をもち,植物体を保護するとともに,気孔を通してガス交換を行う。皮層または基本組織系はおもに柔細胞からなり場合によっては厚壁細胞なども含み,比較的盛んに物質代謝が行われている部分である。維管束は木部と師部からなり,植物体の機械的支持機能と体内物質の通道の役割を果たす。維管束は植物群によっては内皮によって囲まれている。維管束または中心柱の形態も多様であり,真正中心柱(双子葉植物,裸子植物),不整中心柱(単子葉植物),管状中心柱(フモトシダ),網状中心柱(オシダ),原生中心柱(ヒカゲノカズラ)などがある。被子植物ではふつう茎は胚軸を介して根につながる。茎の中心柱は胚軸中の移行的な形態をした中心柱を経て根の放射中心柱に移りかわる。節において茎の中心柱は葉に入る維管束(葉跡)を分枝する。シダ類では葉跡が分枝する部位で中心柱に穴(葉隙(ようげき))があくが,他のシダ植物では葉隙はなく,種子植物では葉隙はみられないか,あってもシダ類のものと性質が異なると考えられている。

 茎の先端の茎頂は生長・分化の中心として植物体にとって非常に重要な部分であり,茎・葉・花の諸器官がつくられる。さらに,多くの単子葉植物やシダ植物では不定根も茎頂由来の組織からつくられる。このような様式で新しい器官・組織を分化させてつみ重ねていく茎頂が個体発生の期間中保持される植物の体制は動物の場合と大きく異なる。茎頂は根端における根冠のように保護組織をもたないが,葉・鱗片・粘液などでおおわれている。茎頂すなわち頂端分裂組織の構造についてはこれまでいくつかの説が提唱されている。単一の始原細胞が頂端にあって,それから茎の各部分がつくられるとする頂端細胞説,各組織が由来する層状構造の分裂組織を認めた原組織説,各組織の由来を問わずに茎頂の層状構造だけをとらえた外衣内体説,茎頂の最先端は栄養期には不活発な分裂組織であって,それをとり囲む始原環が最も盛んに活動するとみる待機分裂組織説,細胞の特徴によって細胞群を認識し茎頂の構造を分けた細胞組織説などがある。

 茎頂の構造は植物群や茎の状態によってさまざまであるが,一般にはシダ植物の多くでは頂端細胞型,裸子植物などでは頂端細胞群型,被子植物では始原細胞自身が層状構造をもつ複層型である。茎頂の下の部位では細胞が分裂・増大しながら分化しつつあり,そこでは原表皮・前形成層・基本分裂組織の3層をほぼ認めることができる。これらはさらに分化して,それぞれはおおむね表皮・維管束・皮層と髄(または基本組織系)になる。

 裸子植物や双子葉植物にはふつう維管束の木部と師部の間に形成層と呼ばれる分裂組織があって,その活動によって二次生長(肥大生長)がおこる。形成層は前形成層から中間段階を経て由来すると考えられている。形成層からは内方へ二次木部が,外方へ二次師部がつくられる。木では形成層の活動が盛んであり,草では不活発である。単子葉植物でもヤシなどにみられるように木になるものもある。その場合,形成層とは異なる分裂組織によって肥大生長がおこるものもあれば,一次生長だけで木生になるものもある。またシダ類でもヘゴは木生シダと呼ばれているが,二次生長はしていない。草では茎は表皮によっておおわれているが,樹木の多くでは表皮は二次組織の増大にみあった生長ができないので,表皮に代わる保護組織として周皮ができ植物体をおおうようになる。周皮は,表皮または皮層(多くの場合皮層の外層)が分裂能力を回復してできたコルク形成層から形成され,そこから外方にコルク組織,内方へコルク皮層がつくられる。樹皮の形状は種によってさまざまであるが,それはコルク形成層の分化・活動のしかたが多様であるためである。その他,ふつう茎の気孔の下で,コルク形成層に連続した形成層(皮目形成層)から皮目がつくられることがある。皮目は細胞間隙をもち,呼吸に関与している。

葉と花の分化

茎頂は茎自身の組織を形成するだけでなく,葉原基と芽原基を発生・分化させ,しかもそれらが形成されるうえで茎頂は,下方の既成の組織からの影響を受けない自立した部分といわれている。葉は茎頂の中心からややはずれた側方にこぶ状のふくらみ(葉原基)として現れる。その発生は周期的で一定の配列すなわち葉序にしたがい,しかも葉序と茎の中心柱の形態とは密接な関係がある。茎頂は次の葉原基が発生するまでの間に,つまり葉間期に,細胞分裂をくり返して生長を継続するので,つくられた葉原基は相対的にさらに側方へずれる。新しい葉原基はそのようにしてできた茎頂の空間に生じる。発生したばかりの原基が茎頂の支配的な影響を受けて葉として分化するように決定されることが実験的に示されている。被子植物では茎は栄養期から生殖期に移行すると花芽を形成する。その移行期の茎頂では細胞分裂が盛んになり,とくに茎頂の先端部や中央部で活発に分裂し,その結果茎頂は形や大きさが変化する。内部構造についても,栄養期の複層型構造が変化し,表層の細胞は小さくよく染色されるようになるが,内部の細胞は液胞化してくる。これらの形態的変化に先だって,あるいはそれにともなってDNA・RNA・タンパク質の量と分布など生理・生化学的状態が変化する。このように生殖期茎頂が形成されたあと,そこで萼片・花弁・おしべ・めしべの花葉が形成され,とくに萼片や花弁は葉の形成に似た過程でつくられる。花茎はふつう茎頂以外の部分が生長することによって伸長し,頂端での生長は有限となる。根茎など側根をつける茎では,根原基は茎頂より少し離れて組織の分化がすすんでいる部位の内鞘(ないしよう)または内皮の細胞から内生的に発生する。

加藤 雅啓
図1~図2
図1~図2
平凡社 世界大百科事典

語幹

言語学の用語。同一の語根とははっきり異なる別の概念である。

湯川 恭敏