平凡社 世界大百科事典

立体印刷

平面の画像でありながら遠近感があって立体的に見える印刷。平らな面の写真あるいは印刷の像を立体的に見せるには,左右離れた場所から撮った写真を並べて立体視鏡で見る方法や,左右色の違うフィルター眼鏡を通して色付画像を見る方法などがあるが,天然色で立体視するにはレンチキュラースクリーンlenticular screenを使用する。これは一つ一つの単位がかまぼこ形をしている微細なレンズの集合で,これをあらかじめ左右の目から見た2種類の像が多数の線で印刷されているものの上にはりつけ,おのおののレンズの作用で2種類の画像を普通の視覚距離で結合させて見て,もとの物体を両眼で見たのに近い効果を出す。レンチキュラースクリーンは,塩化ビニル樹脂,アクリル樹脂などの薄板を成形し凸レンズとする。薄いほど印刷物として取り扱いやすいが,製作は困難であり,厚さ1mm以下,ピッチ0.5mm以下のものが普通に用いられる。厚さに応じてスクリーンのピッチが異なり,この最適条件を見つけることと,ピッチとレンズの形が非常に正確でなければならないことが,普及を遅らせた。印刷では0.5mmくらいのピッチの間に何本かの細線を印刷することとなり,精巧な技術が必要である。

 立体印刷物を作るには,まず風景なり人物なりの立体写真を撮る。これにはレンチキュラースクリーンを感光板の前において被写体あるいはカメラを円弧状に回転しながら数回の露出をして,おのおのの角度から見た像を多数の線として撮影し,これの陽画を撮影のとき用いたものと同様のレンチキュラースクリーンと正しく接合させて立体写真を作る。絵はがき,ディスプレー,カタログ,化粧箱などに利用されている。

山本 隆太郎