平凡社 世界大百科事典

輝安鉱

化学組成はSb2S3の鉱物。少量のFe,Pb,Cuなどを含むことがまれでない。輝ソウ鉛鉱Bi2S3とは同構造で,両者のあいだには連続固溶体が形成される。c軸方向に伸びた柱状の良好な結晶をなすこともまれでないが,針状結晶の放射状集合体,塊状集合体として産することも多い。柱面には縦の条線が発達する。{010}に完全なへき開があり,へき開に沿いすべり面を生じやすい。色,条痕ともに鉛灰色であるが,黒っぽく変色していることが多い。新鮮な面,へき開面では非常に強い金属光沢を示す。比重4.63,モース硬度2で小刀で切ることができる。低温熱水鉱脈鉱床または低温熱水交代鉱床,温泉沈殿物中に産出し,しばしば黄鉄鉱,白鉄鉱,シンシャ,鶏冠石,石黄,硫塩鉱物などを伴う。輝安鉱はアンチモンの最も重要な鉱石として採掘される。日本では兵庫県中瀬鉱山,愛媛県市ノ川鉱山で大規模な輝安鉱-石英脈が採掘された。市ノ川鉱山からは最大長さ60cm,太さ径6cmに及ぶ大結晶が多産し,国内はもとより外国の博物館にもみごとな標本が多数陳列されている。

青木 正博