平凡社 世界大百科事典

スティック・チャート

ココヤシの葉柄と貝殻を結びあわせてつくった海図。太平洋,ミクロネシアのマーシャル諸島の人々は,かつて海面のうねりの諸現象に習熟し,それらをもとにして独自の優れた航海術を編み出したことで知られる。彼らは海のうねりが島に衝突した後に変化することを経験的に知り,それによって目的の島の位置を探りあてた。このような航海術の基本的な考え方を具象化したものがスティック・チャートであり,貝殻が島々の位置関係を示し,ココヤシの葉柄がうねりの方向を示している。これらの海図は実際の航海に携行されるものではなく,若者に航海術を教える際の教材として用いられた。しかし,マーシャル諸島がドイツや日本などによって植民地化されたのに伴い,カヌーによる遠洋航海が禁止され,伝統的航海術は急速に廃れ,スティック・チャートも過去の遺物となった。

石森 秀三