平凡社 世界大百科事典

刺激

生物に作用して特定の反応をひきおこす要因を,一般に刺激という。ふつう,外的条件の変化がそれに対応した感覚器でとらえられて刺激となるが,気温の変化のように全身的に作用する場合もある。刺激によってひきおこされる反応には,反射的におこるまばたきのように局部的な場合もあり,特定のリリーサー(または鍵刺激)によって特定の行動が解発されるときのように全身的なものもある。また一時的なものでなく,形態形成のように持続的な反応がひきおこされる場合もある。からだの内部状態の変化が内部感覚器でとらえられて,内部的刺激となることもある。

 刺激という言葉は分野や場合によってさまざまに使われるが,生理学ではふつう,器官(ないしはある機能的単位)の働きに変化をおこす外部の条件変化をさす。刺激の効果は,働きの上昇(興奮)あるいは低下(抑制)として現れる。効果を現すに足りる最小の刺激の強さを閾値(いきち)と呼び,その逆数をその器官の刺激されやすさ,あるいは興奮しやすさの指標とする。ふつうは刺激を強くすると効果が大きくなるが,ある限度以上強くしてもはや効果の増大がみられぬとき,これを最大刺激という。また神経などのように刺激が閾値に達するとそこで最大の興奮がおこり,それ以上刺激を強めても効果の変わらぬとき,この興奮は全か無の法則(悉無律(しつむりつ)all-or-none law)に従うという。

 目に光,耳に音,皮膚に温度や機械的な接触というように,感覚器にはそれぞれ刺激として適した物理化学的要因(適刺激)がある。感覚器の感受性は驚くほど高く,たとえば網膜の視覚受容器細胞は光子1個に反応するといわれる。光刺激,音刺激というように物理化学的な性質により刺激を定義するほか,身体に害を与える要因をすべてひっくるめて生物学的に侵害受容性刺激と定義する。刺激が与えられてから反応のおこるまでの時間を潜時latent timeという。

伊藤 正男+日高 敏隆