平凡社 世界大百科事典

株式

株主の地位を株式という。額面株式・無額面株式に分けられるが,株式は前述のように均一の割合的単位をとるので,いずれも1株は1株として等価値である。株主がその持株数に応じて平等の取扱いを受けること(株主平等の原則)も,このように1株の包含する権利が同一であることのあらわれである。

数種の株式

各株式の包含する権利の内容が同一であることの例外として,会社は,定款の定めによる範囲内で,権利の内容の異なる〈数種の株式〉を発行することができる(222条)。数種の株式は,(1)利益または利息の配当,(2)残余財産の分配,または(3)利益をもってする株式の消却について認められる。(1)または(2)につき,他の種類の株式に対し,優先的取扱いを受ける株式を優先株,劣後的取扱いを受ける株式を劣後株という(転換株式という。さらに,利益配当に関する優先株については,その株主に議決権がないものとすることができ(242条),これを議決権のない株式という。数種の株式は,日本では第2次世界大戦後,ある会社が2度にわたって発行した例があるにすぎない。

社債との比較

株式と社債とを比較すると,いずれも会社資金調達の手段として発行され,その流通性を高めるために有価証券(株式の場合は株券,社債の場合には社債券)に表章される点で共通しているが,次のような差異がある。第1に,株式の所有者(株主)は,株主総会の議決権その他各種の共益権を有するのに対して,社債の所有者(社債権者)は,そのような権利を有せず,社債の償還および利息の支払に関連する権利を有するにすぎない。第2に,株主は,配当可能利益が生じた場合にのみ利益配当を受けることができ,またその額も確定していないのに対して,社債権者は,配当可能利益の有無にかかわりなく,確定額の利息の支払を受けることができる。第3に,株式の場合には,原則として株金の払戻しをすることが許されないのに対して(上述の償還株式はその例外),社債の場合には償還期限がくれば償還を受けることができる。以上のような差異は,株主が実際にみずから議決権を行使する例が少ないこと,また株主に対する利益配当も経営者ができるだけ一定額の安定的配当をするように努めていること等によって,事実上減少している。また法律的にも,利益配当に関する優先株で償還権があり,かつ議決権のない株式は,社債にきわめて類似することになる。

株式の発行

株式の発行は,会社設立時に,また成立後は時価発行では数%のディスカウントが行われている)新株を発行する場合には,そのような価額で新株を発行することを必要とする理由を示して,株主総会の特別決議がなければならないものとされている(280条ノ2-2項)。株式の発行の対価としては,金銭を払い込ませる場合(この場合のことを金銭出資という)のほかに,金銭以外の現物を給付させる場合(この場合のことを現物出資という)があり,後者の場合には,現物の過大評価がなされていないかどうかにつき原則として裁判所の選任する検査役による調査がある。

 新株の発行には,以上のように対価の払込みまたは給付をさせてする場合のほかに,準備金の資本組入れによる無償交付(293条ノ3)および額面超過額の資本組入分による無償交付(293条ノ3ノ2)など,会社がすでに保有している財産を引当てにして,既存の株主にその持株数に応じて無償で新株を発行する場合もある。

株式の譲渡

株式は,相続・合併等によって移転するほかに,その譲渡によって移転される。株式の譲渡は株券の交付によってなされる。株式会社では,原則として,株主数が多数でだれが株主になるかは問題にならないし(株主の個性が問題にならない),株主に対して投下資本を回収する手段を与えなければならないから,株式の譲渡は自由とされるが,次のような制限がある。

 まず法律上の制限として,第1に,会社成立前または新株発行前の株式引受人の地位(権利株)の譲渡(190条,280条ノ14-1項)および株券発行前の株式の譲渡(204条2項)は,当事者間では自由であるが,会社に対しては効力が認められない。株主名簿の名義書換えおよび株券発行に関する事務手続上の便宜のためである。もっとも,そうすると,会社がいつまでも株券を発行しないと株主が株式を譲渡できないという不都合が生ずるので,会社が株券の印刷に必要な合理的期間を経過しても株券を発行しないときは,株券なしの株式の譲渡を会社に対して主張できると解されている。

 第2に,会社は,一定の例外の場合を除き,自分の会社の株式(自己株式)を取得し,または発行済株式総数の20分の1を超えてこれを質権の目的として受けることができない(210条)。

 第3に,子会社による親会社の株式の取得も,一定の場合を除き禁止される(211条ノ2)。ここで親会社・子会社の関係は,ある会社(親会社)が他の会社(子会社)の株式または持分(有限会社の場合)の過半数を有する場合,ある会社(親会社)およびその子会社が合わせて他の会社(子会社)の株式または持分の過半数を有している場合,ある会社(親会社)の子会社が他の会社(子会社)の株式または持分の過半数を有している場合に認められる(211条ノ2-1項・3項)。さらに,定款によって株式の譲渡を制限することが認められている(204条1項但書)。株式会社のなかにも,小規模で株主数が少なく,株主の個性を無視しえない企業も少なくないので,そのような会社については,定款で株式の譲渡には取締役会の承認を要する旨の定めをすることを認めたのである。しかし,株式の譲渡の制限は株主に不利益を与えるので,この場合の定款変更のための株主総会の決議要件は特別に厳格になっている(348条)ほか,反対株主に対して株式買取請求権を認め(349条),さらに株式取引の安全の見地から,そのような定款の定めがあることは登記および株券の記載事項とされる(188条2項3号,175条2項4号ノ2,225条8号)。そのうえ,株主に投下資本の回収の手段を保障しなければならないから,株主がある者に対して株式を譲渡したい場合において取締役会がその者に対する譲渡を承認しないときは,他に譲渡の相手方を指定しなければならないものとされ(204条ノ2),かつ株主とその譲渡の相手方として指定された者との間の売買の決済方法についても定めがなされており(204条ノ3,204条ノ4),同じ趣旨の定めは,競売・公売による株式の取得者に関しても設けられている(204条ノ5)。

株式の分割

株式は分割することができる。株式分割とは,1株を2株にするように,既存の株式を細分化して従来よりも多数の株式にすることである。たとえば,株価がいちじるしく高くなった場合に,その時価を低くして流通性を高めるためなどに利用される。株式を分割すると,各株主の有する持株数は増加するが(1株を2株に分割すると持株数は2倍),発行済株式総数に対する比率は従来どおりであり,会社財産が増減するわけでもないから,各株主の有する地位に変更をきたすわけではない。このように株式分割は,株主の実質的地位に変更を及ぼさないから,それ自身は取締役会の決議だけですることができる(218条1項)。もっとも,額面株式の場合には,定款で1株の金額が定められているから(166条1項4号),定款変更のための株主総会決議が必要である。また額面株式の場合に,株券には1株の金額が記載されているので(225条4号),株式分割によって券面額の修正が必要になるが,そのために旧株券を提出させて新株券を交付するという煩雑な手続を省略するために,1株の金額の読替えの規定が設けられている(219条4項,218条3項)。たとえば,1株の金額が10万円とされていた株式1株を1株の金額5万円の株式2株に分割する場合には,その株券は分割後の1株の金額5万円と記載したものとみなされ,したがってあらたに1株の金額5万円の株券をそれまでと同じ株式数だけ発行すればよいことになる。無額面株式の場合には,額面金額が存在しないから定款変更決議の必要がなく,株券の交換の必要もなく,株式分割によって増加した株式数を記載した株券を株主に交付すればよい。このように,株式分割のためには無額面株式のほうが簡単なので,株式を分割しようという会社が取締役会の決議により額面株式を無額面株式に転換する例が見受けられる(213条1項)。また,後述するように,株式分割後の1株または1単位当りの純資産額は5万円以上でなければならない。

株式の併合

株式は併合することができる。株式併合とは,数個の株式を合わせてそれよりも少数の株式にすることである。資本減少の場合(377条)および合併の場合(416条3項)のほか,株式の単位を引き上げる手段としてなされる(214~217条以下)。すなわち,1株当りの純資産が5万円未満である会社がこれを5万円以上とするために,株主総会の特別決議で株式の併合がなされる。株式併合の場合には,株式分割と異なり,併合に適する株式の数を記載した株券(3株を1株に併合するときは3の整数倍の株式の数を記載した株券)については,併合後の株式数を記載したものとみなすことができ,株券の交換を要しない。

株式の消却

株式数が減少するもう一つの場合に株式消却がある。特定の株式を消滅させることであり,株主に配当すべき利益をもってする場合(212条1項但書・2項)および資本減少の場合(212条1項・2項)がある。利益をもってする消却にも,前述した償還株式の場合(222条)および定款の定め(原始定款の定めまたは総株主の同意によって変更されたものと解するのが多数説)のほか,定時総会の決議による場合(212条12)および定款の規定に基づき取締役会の決議による場合(株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律3条)とがある。

株式の単位--単位株制度

1981年の改正商法において,それまでは株式の単位が小さすぎる会社が大部分であったので(大部分の会社は1株の金額(額面)が50円であった),これを改めるため,株式の単位が法律で強制的に引き上げられた。すなわち,以後,新設される会社については,設立時の額面株式の1株の金額は5万円以上とされ(166条2項),同様に設立時の無額面株式の発行価額も5万円以上とされ(168条ノ3),結局,設立時の1株の単位は5万円以上とされることになった。このように設立時に1株の単位の大きさを規制しても,その後にその単位が小さくされることを阻止するため,株式分割は,これにより株式数が増加した後の1株当りの純資産額(純資産額を増加した後の発行済株式総数で割った額)が5万円以上となる場合に限ってすることが認められる(218条2項)。このように1株の単位が大きくなると,新株発行により生ずる1株未満の端数も無視できないので,端株制度が設けられた。

 既存の会社については,株式併合により株式の単位を大きくすることを強制することは,株券の交換等の手続が煩雑で事実上不可能なので,上場会社に限ってではあるが単位株制度を強制している。すなわち,券面額が5万円になる数の株式(1株の金額50円の会社の場合は1000株)を1単位として(定款で別に1単位となる株式数を定めてもよいが,その場合には1単位当りの純資産額は5万円以上にならなくてはならない),単位未満の株式を有する株主に対しては利益配当請求権など法定の権利(それは議決権などのいわゆる共益権を含まず,自益権に限定されている)しか行使することができない(1981年改正商法付則15条1項1号,16条,18条1項)。この単位株制度は上場会社以外の会社でも定款でこれを採用することが認められている(1981年改正商法付則15条1項2号)。単位未満株式はその譲渡が不自由なので(会社はあらたに単位未満株券を発行することができず(同付則18条2項),したがってその譲渡も不可能である),会社に対する株式買取請求権が認められている(同付則19条)。この単位株制度は経過的なものであり(付則に定められているのもそのためである),単位株制度の採用が強制された会社および定款の定めによりこれを採用した会社については,別に法律で定める日に1単位の株式を1株に併合する旨の株主総会の決議があったものとみなして,株式併合の手続をとることが強制されることになっている(1981年改正商法付則15条1項)。→社債

前田 庸
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岩株

火成岩の産状の一つ。深成岩や浅成貫入岩はさまざまな形で地表に露出するが,その露出規模が小さいものが岩株,大きいものがバソリスと呼ばれる。北米大陸では40平方マイル(約100km2)以下に対して用いられるが,日本ではさらに小規模な岩体に用いられることが多い。岩株はおもに同一系列のマグマが固結したものであるが,一部には2系列のマグマからなる複合体から構成されることもある。

石原 舜三
平凡社 世界大百科事典

ストック

地球が太陽を1周する時間の1/12を1単位として時間を測っても,月が地球を1周する時間を1単位として時間を測っても,われわれの今保有する現金の量は変わらない。現金保有量のように,時間を測る単位の変更によってもその大きさが変わらない変数をストックと経済学では呼ぶ。したがってストックとは,会計学,簿記において〈残高〉と呼ぶ概念と同じであり,また物理学での位置に対応する概念である。ストックに属する概念は,マクロ的な変数では国富,貨幣供給量,外貨準備高等が代表的であり,ミクロ的な変数では各企業の負債残高,資本金,棚卸資産,固定資産等の貸借対照表の項目や,家計の保有する貨幣量,預金量が代表的なものである。なお,フローという概念がストックと対になっており,フローは時間の尺度のとり方で値が変わる変数をいう。→フロー

小谷 清
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台木

接木のさいに,接木植物の地下部となる部分をいう。台木に接着させる部分は接穂または穂木といい,台木と接穂は相互に影響を及ぼし合う。栽培的に重要なのは,台木の種類によって地上部の大きさ,結実までの期間,種々の不良環境に対する適応性が異なることである。また,根に寄生する病虫害に対して抵抗性をもつ台木(免疫性台木)に接木すれば,それらの被害を回避することができる。リンゴ栽培では,近年樹高を低くして果実を収穫しやすくするために,枝の伸長を抑え,地上部を小型化する台木(矮性(わいせい)台)を利用することが多くなっている。また,ブドウは挿木で繁殖させることもできるが,根に寄生するフィロキセラという害虫の被害を回避するために,フィロキセラ抵抗性台木に接木をするのが普通である。

 一般に,台木と接穂が近縁なほど接木植物は順調に生育し,正常に開花,結実を続けることができるので,接穂と同じ種の台木(共台)を用いることもあるが,同属異種の台木を用いることが多い。異科間の接木では組織の癒合が起こらず,また同科異属間の接木でも組織が癒合しないか,癒合してもやがて樹勢が衰えて枯死してしまうことが多い。しかしながら,ウンシュウミカンとカラタチ,セイヨウナシとマルメロの組合せのように同科異属の台木を用いても強固な結合を示す場合がある。台木は多少の遺伝的変異があっても,その変異の影響が接穂に現れることは少ないので,接木

杉山 信男