平凡社 世界大百科事典

口内炎

口腔粘膜に種々の炎症病変がみられる状態をいい,口腔のみの疾患の場合と全身疾患の口腔内症状として現れる場合とがある。病態によって,カタル性,水疱性,潰瘍性,および壊疽(えそ)性に分けられる。

(1)カタル性口内炎 単純性口内炎ともいわれ,粘膜の発赤と腫張,粘液分泌の増加などがみられるもので,口内の熱感,唾液の粘稠化等の症状があり,数日間で自然治癒することが多い。

(2)水疱性口内炎 口腔粘膜に多数の水疱がみられるもので,水疱は短時間で破れて潰瘍となり,潰瘍性口内炎に移行する。天疱瘡の口腔内症状として現れたり,ウイルスの感染によるヘルペスアンギーナや疱疹性口内炎としてみられる。

(3)潰瘍性口内炎 口腔粘膜に潰瘍が形成されているもので,潰瘍の状態によって糜爛(びらん)性,偽膜性,アフタ性などに分けられるが,アフタ性口内炎が最も多い。原因は細菌あるいはウイルスの感染,薬物ないし薬物アレルギー,皮膚科疾患など局所的なものと全身的なものとがある。アフタは,直径1~8mmの輪郭のはっきりした潰瘍で,そのまわりは幅の狭い紅斑で取り囲まれており,潰瘍面には灰白色の偽膜が固く着いていることが多い。アフタの発生状態および数により,アフタ性口内炎,孤立性アフタ,再発性アフタなどと呼ばれている。アフタ性口内炎では,口の中の熱感,飲食物摂取のときの接触痛,嚥下痛などの症状が強く,顎下リンパ節のはれと痛みを伴うことが多い。潰瘍性口内炎の治療は,安静と栄養補給に留意し,多くの種類の細菌に有効な抗生物質を投与し,口腔内を清潔に保ち抗生物質軟膏の塗布あるいは抗生物質トローチの投与を行う。

(4)壊疽性口内炎 歯肉の壊死および腐敗性変化がしだいに周囲に広がり,顎骨も侵されるもので,腐敗性の口臭が強く,壊疽の進むにつれて全身状態も悪くなる。麻疹,腸チフス,猩紅(しようこう)熱,百日咳,肺炎,高熱性疾患の回復期あるいは無カタラーゼ症の場合に細菌の感染によって生じる。治療法は潰瘍性口内炎とほぼ同様である。

砂田 今男