平凡社 世界大百科事典

カワゲラ

カワゲラ目Plecopteraに属する昆虫の総称。襀翅(せきし)類ともいう。体は比較的原始的な構造をもっている。口器は退化的傾向にあるが,機能は失っていない。直翅類(コオロギ,バッタなど)に近縁であるが,前翅と後翅はほとんど同じ構造で,また,脚の基節が小さいことなどから完全に異なる。現代のカワゲラは二畳紀の原カワゲラ目ParaplecopteraのMarkemidaeを直接の祖先型としている。

 成虫はすべて陸生であるが,幼虫は流水中で生活するため成虫も水辺に多く,近くの草や樹木に止まっていることが多い。成虫は,一般に水辺近くを飛翔(ひしよう)するが,飛翔力は強くない。静止するときは,前翅を後翅の上に積み重ね合わせて背中にたたんでいる。ここから襀翅類の名がついた。成虫は褐色ないしは淡黄色で,体長8~30mm前後,扁平で,腹端に1対の尾毛がある。一般に膜質の2対の翅をもつが,トワダカワゲラなどではまったく翅をもたない。翅をもつものでも同種でありながら翅の長さの極端に異なるものがある。カワゲラ科Perlidaeなどの大型のものでは成虫は食物はとらないとされているが,オナシカワゲラ科Nemouridaeなどの小型種では樹幹上に生育する藻類や地衣類を食べ,モモの実を食害することもある。成虫は比較的短命で羽化後1週間~10日で死ぬ。

 幼虫は翅をもたないことを除いて,成虫の構造とそれほど異ならない。しかし,種によっては口器の一部や胸節,腹端部に気管えらをもつものがある。幼虫は渓流の流れの比較的緩やかな石の下や,沈んだ葉の間に隠れて生活している。幼虫の口器と食性はよく対応しており,肉食性のカワゲラ科などでは大あご,小あごはよく発達するが,草食性のオナシカワゲラなどではそれほど発達していない。生活史に関してはまだ十分に解明されていないが,1~3年で成虫になる。不完全変態で,成熟した幼虫は比較的湿度の高い早朝に岸にはい上がり羽化する。幼虫は渓流魚の食物として,川の生態系の中で重要な位置を占めるとともに,渓流釣りの餌としてよく使われる。

 カワゲラ目はミナミカワゲラ亜目Antarctoperlariaとキタカワゲラ亜目Arctoperlariaに分けられる。前者は原始的な特徴をもつもので,オーストラリア,ニュージーランド,南アメリカに分布する。後者は北半球を中心に地球上に広く分布する。日本からは約160種が記録されている。

川合 禎次