平凡社 世界大百科事典

採鉱

採鉱という語は,広い意味で,鉱山での作業全体を指す場合と,その中でとくに鉱石を採掘するための作業を指す場合とがある。ここでは,狭い意味での採鉱について述べる。

 日本の一般の鉱山における採鉱課の業務,すなわち鉱床開発のための作業や鉱石の採掘が採鉱であるが,普通には,さらに鉱石を探すために行う坑道の掘進や,採鉱作業に使用する各種の機械類の運転なども採鉱の中に含ませる。採鉱の活動はこのように鉱山活動の中心をなすものであって,地下の鉱石を安全に,経済的に,しかも完全に採取することを目的としている。鉱石の採取が経済的に行われなくてはならないことは当然であるが,そのために安全性がないがしろにされたり,鉱石価値が高く採取しやすい部分だけを採取するようなことをしてはならない。安全を無視した作業は事故のもととなり,結果的には経済性を失わせることになる。また品位の高い掘りやすいところのみを採掘することは,その周辺にある比較的経済価値の低い部分の鉱石をむだにしてしまうことになる。そのために,できるだけ安全な採取方法の確立と,鉱床の高品位部分,低品位部分をいっしょに評価して完全に採掘し,全体として収益を上げる方策の適用に努力する必要がある。このような基本的な立場に立って,鉱石の採取を行うのが採鉱である。

開坑

探査活動によって鉱石の存在が確認され,その開発が可能であるとの判断が下されると,採掘の準備が始まる。地下深くにある鉱床の開発のためには,鉱床に到達するための立坑,斜坑,横坑の開削が必要である。こうした坑道によって鉱床に到達するとさらに,坑内に,鉱床の合理的な開発に適した骨格となる坑道を展開し,必要な諸設備を設置するための空洞の開削が行われる。普通の坑内採掘鉱山における地下設備として,坑内クラッシャー,扇風機,ポンプと水ため,機械類の整備工場,巻上機,変電設備,火薬庫,見張り(坑内事務所),休憩所等があり,さらに,高温鉱山における冷凍機の設置などといった特殊な設備も必要になる。

 鉱山を開発するために行うこうした準備作業を鉱山用語で開坑と称するが,この語は,立坑や斜坑,あるいは主要な横坑(通洞という)を掘削し鉱山を開くという意味とともに,これらの施設そのものをも意味する。鉱床が地表近くにあって露天採掘によって採取が行われる場合でも,鉱床に至るまでの道路建設や流入する河川の経路の変更,はぎとった表土の捨場の建設といった作業は,当然,開坑の範疇(はんちゆう)に入れられる。いずれにせよ,開坑によって作られる鉱山の骨格がその鉱山にとっての基本となることを考えれば,周到な検討と慎重な作業が行われなくてはならないことは当然である。

露天採掘

鉱床が地表に近く存在する場合には,ふつう,その露頭部から,あるいは地表の土石をはぎとって鉱床を露呈させ,鉱石を採掘する。露天掘りと俗にいうことも多いが,この採掘法は作業が単純で機械類の導入も容易であり,能率のよい採掘を行うことができるため広く行われている。とくに,比較的低品位で大規模な鉱床をこの方式で採掘する例が多く,世界の大鉱山といわれるものの大半は露天採掘鉱山といってよい。

 露天採掘を決定する要因の一つに剝土比がある。これは鉱石1tを採掘するに必要な剝土・剝岩の量(容積で表す場合もある)であるが,この値が,採掘した鉱石の価値と鉱石プラス余分に掘りとられる土石の採掘に要する費用との差,すなわち鉱石の採掘によって得られる収益を決定する要因であることは容易に理解されるところである。

 マレーシア,サバ州のマムート鉱山は日本の企業が現地法人に協力して開発した鉱山で,ボルネオ島の北部の1500mほどの高地で年間約250万tの銅鉱石を生産している。現在の採掘ピットの大きさは直径700mのほぼ円形で,深さ300mほどのすり鉢状をなしており,傾斜20~45度の斜面に各段12m高さの採掘ベンチが作られている。上部の斜面はすでに採掘が終わっているが,中段以下のベンチで盛んに採掘が行われている。開発の初期には,風化岩の多い,処理しにくい表土はぎに苦労したが,現在では剝岩量は少なく,鉱石とともに採掘され捨てられる廃石と合わせて,剝土(岩)比1.5という数字になっている。ベンチでは,直径18.8cm,長さ14.9mの爆破孔を70度の傾斜で6~7m間隔に削孔し,これに爆薬を装てんして,鉱石を爆破する方法が行われる。破砕した鉱石は8~10m3の大きさのバケットをもつ積込機で40~45t容量のトラックに積み込まれ,破砕場へと運ばれる。ピットの最下底部の鉱石は破砕場へ運び上げられることになるが,大部分の鉱石は,斜面に沿った運搬路をトラックに積まれて下ってくる。

 日本では,露天採掘鉱山のほとんどは石灰石や砕石など非金属鉱物を採掘する鉱山に限られる。とくに石灰石鉱山には,生産量の大きい重要なものが多い。福岡県にある東谷鉱山もその一つで,平尾台と呼ばれる石灰岩台地の一隅で年間920万tの石灰石を生産している。採掘の方法はマムート鉱山と同様の階段採掘法であるが,ベンチの高さは15mある。孔径10.5cm,深さ17.5mの爆破孔で爆破し,これを車体の前部にショベルのついた積込機で32~46t容量のトラックに積み込んで,切羽の要所に作られた立坑へ運搬する。立坑に落とし込まれた石灰石は立坑底のクラッシャーで破砕され,ベルトコンベヤで坑外の貯鉱場へと引き出される。この鉱山の剝土量も石灰石1t当り0.2tと小さいが,鉱床の各所にアプライト(細粒花コウ岩)の岩脈があって,その除去が必要であり,爆破孔の掘削や爆破作業に影響を与えている。なお東谷鉱山では,1983年現在,合計250人の人たちが働いており,1日に2方(ふたかた)(1作業単位,8時間に相当)の操業を行っている。

 砂金や重砂(金紅石,モナザイト,ジルコンなどを含む砂)のように重い鉱物を含む砂鉱床の露天採掘では,浚渫(しゆんせつ)船(砂金を採取する場合には採金船という)を使うドレッジングと呼ぶ方法も行われる。この方法は河川敷や河岸段丘,あるいは海岸段丘など開けた水の得やすい鉱床に対して適用されるが,鉱床の一部に池を作り,この中に浚渫船と呼ばれる台船を浮かべ,この台船に載せたバケットラダーやサクションポンプで池の底の砂泥をすくいとって採鉱を行う。すくいとった砂を台船の上の比重選鉱装置で処理して重い有用鉱物を採取するが,この池を徐々に移動させて採鉱を続ける。浚渫船にもきわめて大規模なものがあり,マレーシアやインドネシアの沿岸地帯のスズの採取やオーストラリア東海岸の重砂の採取では,採取用の腕の長さが100mもある大型の浚渫船も使われている。

坑内採掘

地下深くにある鉱床を採掘する場合には,立坑や斜坑で,あるいは山腹から横坑で,地下深くに入って鉱石を採掘することになる。この場合は,鉱石以外の岩石を採掘することはむだなので,鉱石だけを採取するように努力する必要がある。鉱床の形や鉱石,母岩の性質が多様なため,それらに対応して採掘の方法も多様である。まったく同じ採掘法をとっている鉱山はないといってもよく,また技術の進歩とともに採掘法も変化する。とはいっても,それぞれに共通点もあり,それらによって採掘法を分類することができる。抜掘り法(狸掘り),スクエアセット法,シュリンケージ法,上向・下向階段法(無充てん採掘法),カットアンドフィル法(充てん採掘法),サブレベルストーピング法(中段採掘法),サブレベルケービング法,ブロックケービング法,トップスライシング法などが代表的な方法である。

 福井県の中竜(なかたつ)鉱山は古生代の石灰岩を交代したスカルン型の銀・鉛・亜鉛鉱床で,広い範囲に多数の塊状の鉱体が見つかっている。鉱体の形が不規則で膨縮があり,上向充てん採掘法(カットアンドフィル法)による採掘が行われてきた。最近,坑内の開発に斜坑方式を採用し,削岩機を載せたジャンボとLHD(積込運搬機械)を組み合わせたトラックレス方式(坑内の開発に軌条を用いないでタイヤ方式の車両機械を用いる方式)のメカナイズド・カットアンドフィル法への転換を行った(図1)。この方式は,傾斜10~20度の斜坑からクロスカット(立入坑道,進入坑道)により鉱体の中へ掘進し,さらにこれを切り広げて採掘を行うもので,坑道層準の採掘が終わるとただちに選鉱の廃滓(サンドスライム)を採掘跡に充てんし,そのうえで次の層準の鉱石に爆破孔を作って爆破して採掘することを繰り返す方式である。この方法は安全で,能率も比較的高く,しかも完全に採掘が行える方法であるが,コストはそれほど安くはない。

 フィリピンのアトラス銅鉱山はフィリピン中部のいくつかの島で斑岩銅鉱床の採掘を行っているが,そのうちの一つカルメン鉱体に対してはブロックケービング法を適用している(図2)。鉱体を大きなパネルブロックに分割して,各ブロックの底部に当たる地表下170~200mのところにアンダーカット(下透し)レベル,グリズリーレベル,運搬レベルの三つのレベル坑道を開削する。アンダーカットレベルでパネルブロックの底の鉱石を破砕して鉱石をグリズリーレベルを経て運搬坑道で引き抜くと,その後は,その上の鉱石は地表までの鉱石や表土の自重で壊され,下方へ落ち込んでくる。落ち込んできた鉱石をつぎつぎと引き抜いて採掘を行うが,この方法は鉱石の自然崩壊をつぎつぎとひき起こして採掘を行うため,引抜きをじょうずに行って崩壊を順次ひき起こすことができれば,安価で能率のよい方法とされている。露天掘りで採掘していた鉱床が深くなって露天採掘が困難になった場合に,ブロックケービング法による坑内採掘に切り替えて採掘を継続している鉱山も数多く知られている。

 採掘作業の行われる場所を切羽と呼ぶが,ここでの作業は削岩,爆破,鉱石の積込み,支柱立て,充てんといったもので,それぞれの職種の鉱員がそれぞれの機械や道具を駆使して作業に従事している。坑内は暗く,高温であったり湿度が高かったりして,坑外の作業と比べれば環境の悪いこともあり,落盤などの危険も少なくはない。しかし,近代の鉱山では,通気,照明,作業時間などが改善され,厳重な保安規則もあって,安全に作業が行われる。

採鉱付帯作業

採鉱の作業は総合的な技術であって,採掘作業を安全に,円滑に,能率よく行うためには,運搬,排水,通気,支保,照明などの諸作業が一体となって機能しなくてはならない。切羽で採掘された鉱石はそれぞれの区域の鉱井(鉱石を投入する貯鉱立坑)に集められ,さらにレベル坑道を列車で運搬立坑へ運ばれる。立坑では,鉱車に積まれたままケージ(立坑の昇降装置)で,あるいは立坑底のクラッシャーで破砕されたのち,スキップ(つるべ式の鉱石巻上装置)で地表に運び出される。斜坑をベルトコンベヤで運び出す方式もあり,坑内にトラックを入れて斜坑を運転してくる方式もある。鉱床が山の中腹にあって,横坑で開発が行われている場合には,鉱石を持ち上げることをせず,なるべく下の坑道に集めて,そのままその坑道を通して外へ運び出すのが合理的である。

 露天採掘鉱山でも同じであるが,採鉱作業とは運搬作業であるといわれるほど,運搬は重要である。大量の,重い,しかも値の低い鉱石を地下から地表へ持ってくる作業は,そのシステムを誤ると,鉱山の命運を左右することにもなりかねない。また,坑内には地下水が湧出する。露天採掘でもピットが深くなれば排水をしなくてはならないが,坑内採掘では水はとくに重要な問題である。断層や含水層の関係で湧水の多い鉱山は多く,採掘した鉱石の量の何倍もの水をくみ出している鉱山さえある。開発部分が排水坑道(疎水坑道)より上にあれば,水は自然流下させて,排水坑道を坑外へ流し出してくればよい。深いところで採掘が行われていれば,ポンプでくみ上げなくてはならない。含水層に逢着したり,水のたまっていた採掘跡に掘進したりして,不意に大量の水が出る場合もある。このような不時出水を避けるために,先進ボーリングを行ったり,予備のポンプを設置しておくなどの予防措置や対策を考慮しておかなくてはならない。

 浅く,規模の小さい鉱山では,坑内外の温度差による自然通気のみで必要な空気量が得られることが多いが,坑内が深く大きくなるにつれて大量の空気が必要になり,扇風機による機械通気(強制通気ともいう)が不可欠となる。通気の目的は,坑内に新鮮な空気を供給して汚れた空気を排出し,さらに,坑内の温度を調節することにある。坑内の空気は,作業員の呼気や機械類の排気や発破の後(あと)ガスなどによって汚れ,また地熱により,あるいは鉱石や坑木の酸化熱などによって温められる。主扇風機は坑口に設置されて坑内に大きな空気の流れを作り,要所要所では,局所扇風機により通気を行う。

 坑内に展開する坑道や必要な諸設備を置いてある空間を維持し,採掘切羽の確保と作業の安全のために,坑木や鉄柱を立て,枠組みをし,さらに必要な場合には,鉄筋コンクリートの枠や巻きつけを実施する。この作業が支保作業(ロックボルトともいう)支保という技術もある。また岩盤が堅硬で空洞の大きさがそれほど大きくない場合には,掘ったままで放置しておいても,空洞は長期間安定している。しかし,普通の岩盤は脆弱(ぜいじやく)ですぐに崩壊する。堅硬な岩盤内の空洞であっても,やはりいつかは崩壊し,他の作業にも影響を及ぼし危険なので,それを防ぐために不必要な空洞は,廃石や選鉱工程で出てくる廃滓で充てんしてしまうことが望ましい。この充てんも,支保作業の一部である。

 暗い坑内では,照明も重要な作業である。かつてのアセチレンランプによる照明は,蓄電池を電源とするキャップランプの普及で,今日ではほとんど見ることができなくなってしまった。坑内の主要な個所には蛍光灯による照明が行われ,切羽でも各種の投光器が使用されて,明るい環境のもとで作業が行われる。→鉱山

採鉱の技術史

火を作るのに用いられた火打石や,石鏃,刃物などになる黒曜石は石器時代から採掘されており,世界の各地にその採掘址が知られている。これらの堅硬な岩石を木や石塊や骨などの道具だけで採取することはずいぶんとたいへんな作業であったに違いない。岩石の自然の割れ目にくさび(楔)を打ち込んだりして,採取したものと思われる。

 中国の春秋時代(前770-前403)はみごとな青銅器を作り出した時代であるが,安徽省の銅緑山というところで,この時代から漢の時代(前206-後220)に至る鉱山のあとが発見されている。その初期の時代の立坑の一つは断面が60cm×60cmの四角形で,きちんと木材を組んで作られており,地表から20~30mの深さにまで掘り下げられている。地表の露頭部などで得られる自然銅や酸化銅を追って下部へ掘り下がったものと思われるが,木製のシャベルや熊手,つち(槌),青銅の手斧,のみ,つるはし等が坑道の中から発見されている。中国では,前6世紀までには鋳鉄が知られており,引きつづいて鍛造法の発明もあるので,やがて鉄製の道具が採鉱作業に使われるようになったものと考えられる。立坑や坑道の枠はほぞ(枘)とほぞ穴で組み合わされ,坑木のあるものは先端を削って壁にくさびでしっかりと留めつけられている。漢の時代の立坑は40~50mの深さに達していて,断面も80cm×80cmと大きくなっているが,この立坑には直径26cm,長さ2.5mの木の巻上機がとりつけられていたものらしく,その巻軸の木と鉱石を運び上げるのに用いた竹籠や木製の鉤,草で編んだロープ,釣合い錘などが発見されている。坑内に湧出する水をくみ上げるのに用いた水桶も発見されている。

 人力に頼っていた時代には,坑内から水をくみ出す作業はたいへんなことであったに違いないが,1691年(元禄4)に開発された愛媛県の別子銅山でさえも,その開発は水との闘いであったという。山頂に近い露頭部で採掘が始まったころには,無数の坑口が作られて採掘が行われたようであるが,採掘区域が深くなり水がたまりだすと,坑口は統合され,山腹から採掘場の下部へ向けて掘進された排水坑道によって水を流下させる方法がとられるようになった。排水坑道を中心に採掘が盛んになっても,すぐまた水がたまるようになる。そうなるとまたさらに,その下部に疎水坑道(排水坑道)が掘り抜かれる。このようなことが繰り返されて鉱山はしだいに下部へ展開していったが,やがて山腹から鉱床までの距離が長くなるにつれて排水坑道を掘り進むことが困難になり,江戸末期にはずいぶんと疲弊していたらしい。このころに,木製の傾斜した筒の中のらせん状のスクリューを回して水をくみ上げるアルキメデスポンプと呼ばれるポンプが試みられもした。別子銅山は,西洋の近代技術が入ってくると,いちはやく近代化に努め,削岩機や爆薬を使用して山麓から坑道を開削し,再び活況を呈するに至った。その後,採掘区域が海面以下に下がっても,このころにはすでに大容量のポンプの入手が可能であった。別子銅山が300年の歴史を閉じたのは,鉱石品位の低下と採掘区域が地表から2400mにもなって強大な地圧の制御が困難になったことによる。

 G.アグリコラの書いた《デ・レ・メタリカ》という書物がある。1556年の発刊で,ラテン語で書かれているが,探鉱から製錬に至る当時の鉱山技術のすべてがまとめられている。その中に,岩石を火の助けをかりて破砕する方法や,鉱石の巻上げや扇風機を回すのに馬や水力(水車)も使われていたことが記されている。岩石の前で火をたいて熱して破砕するわけだが,鉱石やたき火から発生する有害なガスや煙は通風のよい坑道や立坑を通して排出されるとも書かれている。水くみには,数多くのバケツを連結したバケットチェーンの装置や,丸太のパイプにバルブのついたピストンを上下させる吸上げポンプや押上げポンプが使われている。

 鉱山技術が近代化したのは産業革命以後のことである。ニューコメン機関やワットの蒸気機関の発明によって機械動力が人力,馬力,水車といった自然動力に代わってからのことである。機械力を使った鉱山技術が鉱山の生産力を高めるとともに機械を動かすための石炭の需要が増し,採鉱技術の進展を促すこととなった。蒸気機関はまず鉱山の排水に利用され,さらに蒸気機関車として石炭や鉱石の運搬に威力を発揮した。黒色火薬が岩石の破砕に使われるようになったのは17世紀ころからであるが,19世紀後半の蒸気機関を動力とする削岩機の出現や,1867年のノーベルのダイナマイトの発明によって,岩石掘削の能率は飛躍的に向上した。その後の採鉱技術は,他の分野の技術の進歩とともに発展した。もともと採鉱技術は総合的な応用技術であるが,とくに電気やディーゼルや油圧などの動力を使った機械類の発達は,いろいろな材料,たとえば削岩機のビットチップ用の超硬合金,バケットライナー用の耐摩耗性材料,あるいは硝安油剤爆薬やスラリー爆薬のような安価で高い安全性を有する爆薬類の出現とともに,鉱石の高能率大量生産を可能にした。これによって,大型の露天採掘技術やブロックケービング法,サブレベルケービング法などの坑内採掘技術が著しい発展を遂げ,世界の各地で低品位大規模鉱床の開発が行われるようになった。さらに最近では,車両タイプの高速高能率機械による坑内作業が行われるようになり,機械化カットアンドフィル採掘法をはじめ多くの採鉱法に適用されて,坑内に1本のレール(軌条)も敷設されていないトラックレスマイニング鉱山が各所に出現した。坑内作業の機械化,自動化も浸透し,ロボットによる作業についても論議されるに至っている。

 動力や機械の近代化が採鉱作業の近代化に寄与したことは当然であるが,これらを合理的に使用して鉱山を開発しようとする考え方も変化した。鉱床の探査技術や鉱石の処理の技術,採掘の結果として発生する環境への影響等を勘案して,最も合理的な採鉱を行うのにはどうするかを考えるシステム工学の導入である。メキシコ湾沿岸地帯にある硫黄鉱山では,地表から鉱体にパイプを下ろし,蒸気を吹き込んで硫黄を溶解し,それをくみ上げる方法をとっている。岩塩鉱山で,坑内に水を入れて塩を溶かして採取しているところもある。すでに採掘を終了した銅の鉱山で,掘り残した鉱石や周辺の低品位鉱石に対して,水や希硫酸を浸透させて銅を溶かし出して回収している鉱山もある。この方法を,手つかずの銅鉱床やウラン鉱床に適用した例もある。いずれも有用成分を溶出して採取しようとする方法で,まだ経験に乏しく,技術的にも未解決の問題が多いが,人間が直接地下に入って採掘し,鉱石を運び出してくる従来の方法とまったく異なった採取法であるため,将来の発展が期待されている。

山口 梅太郎
図1~図2
図1~図2