平凡社 世界大百科事典

斜視

俗に〈やぶにらみ〉〈寄り目〉〈すがめ〉〈ひがめ〉〈ロンパリ〉などとも呼ばれる。一つの目標を見ようとするとき,片眼だけがその目標にむかい,他眼が目標以外の方向にむいてしまう状態で,その方向により,内斜視,外斜視,上下斜視などに分けられる。かなり目立つ状態であるため,紀元前1700年ころのエジプトの記録にもみられる。

斜視の原因と症状

新生児では,眼の位置が不安定であるが,徐々に安定し,目標物に両眼の視線をむけることが可能となって,正しい眼位を確立する。しかし,眼筋に異常があったり,脳内の視覚中枢で両眼視機能に異常がある場合,片眼の視力が不良で両眼視が困難な場合などには,斜視がおきてくる。こうした異常は先天的なものが多いが,外傷その他の疾患で後天的に発症することもある。また幼児の内斜視には,遠視が原因のものも多い。遠視では,目標物にピントを合わせて見るときに,正視の人より強い調節(水晶体を厚くして屈折率を上げること)をしなければならず,それに伴って輻湊(ふくそう)(眼を寄せること)も過剰となって内斜視がひきおこされる。

 斜視では,美容上の問題以上に両眼視ができないために,遠近感や弱視となることもあり,片眼ずつ交代視していると,視力は保たれても,脳の両眼視機能が不良となることも多い。こうした状態は,発症が低年齢であるほど,また持続期間が長いほど著しく,将来治療をしても効果の上がらない不可逆的変化をひきおこす。

斜視の治療

眼筋を手術してその働きを弱めたり強めたりすることが多い。手術の前後に,両眼視機能訓練,弱視の視力回復訓練などの視能訓練が必要なこともある。なお遠視が原因の調節性内斜視に対しては手術は禁物で,遠視の眼鏡を常用することが治療のポイントとなる。

山本 裕子