平凡社 世界大百科事典

地層

地層というのは本来層理面を示す地殻物質であり,そのことから一般には層状に積み重なった堆積岩を指す場合が多い。堆積岩は量としては地殻表層の20%以下を占めるにすぎないが,表面積としては実に75%以上に達し,しかも地層が地球の歴史に関する三次元的枠組みを与えることが明らかになったことから,重要なものとして扱われている。

地層研究史

地層には化石が含まれているが,その意味については長い間正確には理解されなかった。ギリシア時代にアリストテレスは化石を観察し,それらは海の生物の遺骸であり,かつて陸地は海に覆われていたと考えた。しかし彼の考えには,その化石が古い時代のものであるとか,化石となった生物が進化して現在の生物に達したというようなことはまったく含まれていず,この考えは中世を通じて変わらなかった。大航海時代を経て人々の目はしだいに自然観察に向くようになった。化石の成因に関して,イタリアではレオナルド・ダ・ビンチが生物起源のものが地層に化石として残される過程を具体的に観察し記述している。その後17世紀に,コペンハーゲン生れでイタリアでほとんどを過ごしたN.ステノは地層の形成に関して次のような観察を行っている。(1)堆積層は固まった基盤の上に形成される,(2)したがって下の基盤層は新規の堆積の始まる前に固結していなければならない,(3)一つの層は地表をすべて覆っているか,または他の層によって局限されて分布する,(4)一連の堆積が継続中はそこに水が存在して沈殿が行われるのであるから,その下にある地層は上のものより古い。このステノが観察したものが,地史学における基本的概念の一つといわれる〈地層同定の法則〉は地層の編年の基礎としてその後急速に利用された。

地層の分類

堆積作用や堆積環境が地層を構成している物質に反映していると考えて地層を分類することを岩相的区分という。地層の構成物質には大きく分けて砕屑(さいせつ)性,火山性,生物源,化学源などがあるが,地球生成以来の変化をみると,始生代にはおもに火山性が卓越し,原生代を通じしだいに砕屑性が増え,顕生代には生物・化学源岩相が多くなってきているという特徴がある。また,同じ岩相的区分ではあるが,堆積の場によって陸成層と海成層とに区分される。このような判断の第一の手がかりは,層理の種々の形態を指す。砂漠・浅海堆積物に特徴的なクロスラミナ,湖成・浅海堆積物にみられるリップル層理,深海堆積物にみられる級化層理などがその例である。(3)地層面の表裏にみられる跡 地層面に残る雨滴の跡とか,恐竜の足跡,流れ出た堆積物の底面にできる流痕の跡などがある。(4)堆積同時性変形 地すべり堆積物や,堆積性岩脈などによる乱堆積や層間異常などがその例である。

 このように地層を構成する組成,組織,固さ,色とか堆積構造を識別して一つの単位の層を区分したとき,それを単層bedと呼ぶ。単層は地層の最小の単位で,その厚さは数mmのラミナから数mあるいはそれ以上までの幅がある。単層がまとまったのが層員member,累層formation,層群groupなどと区分されている。これらの単位は年代的意味をもっているものではないが,ときに層群が系に分類されることもある。しかし,一般には堆積の場の変動に支配されて地層を形成すると考えられており,その場合に,造山サイクルとしてケイ質砂岩または炭酸塩岩に始まり,蒸発岩,黒色泥岩を経て,ついにフリッシュ堆積物となり,やがて浅海性粗粒堆積物から赤色砂岩で終わるという見方が一つの基準となる。

 次に生成年代を基準とした区分が存在し,その場合には地質時代は相対年代と絶対年代の二つで決定される。相対年代は化石の進化系列を比較して地層の新旧を決める〈地層同定の法則〉にのっとった方法で,最近では古地磁気層位学も化石とまったく同じ方法で調べられているし,また酸素などの安定同位体のえがく変動曲線も同じものと考えられている。一方絶対年代は,14C(炭素14)法,K-Ar法,U-Pb法などの放射性元素の崩壊速度から,その鉱物を含む岩石ができてから現在までの年数が測られる。

 なお,それぞれ離れた地点にある地層を時代ごとにつき合わせることを地層の対比というが,比較的短距離の対比では,化石のほか火山灰,岩塩層などの特徴的な地層(鍵層)が手がかりとして用いられる。

地層形成の成因

地向斜などには大量の地層が保存されているが,これは堆積盆が形成され,堆積物がそれを埋めることによって保存されるためで,地層は結果的に作られるのだという考えがある。そこで堆積盆の種類,形成機構についてふれると,堆積盆についてはクラトン内部にできる内陸盆地と海陸縁辺域にできる縁辺盆地とに分けられる。盆地形成の原因のおよそ50%は堆積物の自重による地殻のアイソスタシーによって説明されるが,その他の50%の成因に関してはいろいろな議論がある。最近有力なのが熱冷却説で,ミシガン盆地,パリ盆地などの研究がある。一方,マントルクリープによる地殻薄化と地溝形成も有力な考えである。

地層と地下資源

地下資源の70%以上が地層中から産出する。石油・天然ガスおよび石炭などのエネルギー資源はすべて堆積性鉱床といい,地層中から産する。そのほか,アルミニウムの原料のボーキサイト,肥料の原料となるリン鉱,さらに岩塩および層状鉄鉱床,窯業の原料としてのカオリン粘土,耐火原料のケイ藻土や石綿,セメント原料の石灰岩など多くの例がある。さらに最近では銅・亜鉛鉱床として日本では有名な黒鉱も火山性海底堆積物と考えられてきている。→地下資源

加賀美 英雄