平凡社 世界大百科事典

材料力学

材料や部材あるいはそれらによって構成される構造全体の外力に対する変形や破壊の性質を調べ,それらの強さ,安定性,剛性などを研究する学問分野。工学のほとんどすべての分野において重要な基礎学問となっている。材料力学の目的は,機械や構造物の材料や形状,寸法を最適化することにより,経済性と安全性を兼ね備えた合理的な設計と使用の方法を与えることにある。広い分野にわたる学際的性格の強い学問であるが,その中心は物体の内力と変形の状態を理論的に求めようとする理論応力解析法である。これは,固体の運動方程式,変形の幾何学的性質を示すひずみと変位の式などを,与えられた力学的・幾何学的境界条件の下で解くことにより,物体内の応力とひずみを求めるものであって,固体力学とも呼ばれている。取り扱う材料の力学的性質によって弾性学,塑性学,粘弾性学,クリープ力学などに分けられ,また形状や力の加わり方の特徴に着目して,物体を棒,はり,板,殻などのモデルに近似し応力を求める有限要素法などによる数値応力解析法が実用上有力な方法となっているが,理論的・数値的解法以外にも,ひずみゲージ法,光弾性法,モワレ法,応力塗料,X線回折法などによる実験応力解析法も用いられる。今日,このような応力解析法とともに,材料の機械的性質を力学,物性の立場から理論的に取り扱うことを目的とする材料強度学も材料力学の中心課題となっており,亀裂のある物体を取り扱う破壊力学は工業上も多大の寄与をしている。

 物体の強さという概念は古くから存在したものと思われるが,材料力学として体系化される契機となったのは,ガリレイが提案したはりの強さを求める問題であるといわれ,これを解くための努力が続けられる過程で材料力学が形成されてきた。すなわち,まず応力の概念の形成,弾性に関するフックの法則の発見を経て,ニュートン力学の形成とともに18世紀にはL.オイラー,D.ベルヌーイによるはり,棒の弾性変形の研究がなされ,19世紀のベルヌーイ=ナビエのはり理論の完成,A.L.コーシーによる弾性の基礎理論の確立へとつながるのである。

朝田 泰英