平凡社 世界大百科事典

ストライキ

罷業または同盟罷業の意。資本家に圧力をかけて要求を貫徹するため,労働者が同盟して労働の提供を拒絶し,いっせいに作業を停止する行為をいう。単にストとも略され英語で海事用語のstrikeから出たもので,その昔,待遇に不満のある水夫たちが帆桁を〈降ろしてstriking〉船の進行を停止したことから,労働用語として使われるようになったと伝えられる。資本主義のもとでは,みずからの労働力を売って資本家のもとで働く以外に生活手段を得る道がない労働者と,利潤を増大させるために賃金・労働条件を可能な限り下げようとする資本家との闘争が避けられないが,ストライキはこのような闘争にさいし労働者の最も基本的かつ効果的な武器として闘われてきた。しかし,資本主義初期のストライキは,原生的な劣悪な労働条件と無権利状態に対する本能的反発を特徴とする自然発生的なものにとどまっていた。それが真の意義をもつようになったのは,資本制的生産関係が確立し,労働者の恒常的組織として労働組合が組織された産業革命以降のことである。労働組合の発展と表裏一体となり,団体交渉と不可分の争議手段として,組織的かつ大規模に闘われるようになった。

 今日,ストライキは多種多様な形態のもとに行われている。職業別組合が熟練工の供給独占を行っていた段階では工場・事業所から退去するウォーク・アウトwalk-outの形をとっていたが,独占資本主義の時代になって半熟練・未熟練労働者の比重が増大すると,ウォーク・アウトを行っても容易にハンガー・ストライキ(通称ハンスト),納金ストがある。山猫ストとは,一部の組合員・労働者が組合や争議団の内部規律を無視して行うストライキをいい,労働組合の官僚機構化が進んだ第1次大戦以降の現代に特徴的な現象である。また,ハンストは絶食をもって示威するもので,消極的戦術ではあるが,社会にアピールするには有効とされる。これに対し,納金ストは1950年代に日本電気産業労働組合(電産)があみだした形態で,組合員の集金した料金の納金を拒否するものであり,その後タクシー会社の争議でも行われた。このように,労働者は実に多様な形態のストライキをあみだしてきたが,現今では,ストライキという用語自体が一般化し,学生の行う同盟休校等にも用いられている。

 しかし,ストライキは,以上のように,単に闘争戦術や形態として評価するのみでは不十分である。ストライキとは一時的にせよ労働者が団結して賃金奴隷であることをやめることであり,このことを通して,労使間の敵対的関係と団結の威力,生産の主人公としての意識と連帯意識を労働者に自覚させずにはおかない。そして,このような自覚が高まれば,ストライキ闘争は経営ストからゼネストへ,そして経済ストから政治ストへと展開し,やがては権力に対する闘争へと発展せざるをえない。ストライキが〈労働者の兵学校〉(レーニン)とされるゆえんである。→労働争議

上井 喜彦