平凡社 世界大百科事典

ストロンチウム

周期表第ⅡA族に属するアルカリ土類金属元素の一つ。スコットランドのストロンチアンに産する鉱物ストロンチアン石(炭酸ストロンチウムSrCO3を主成分とする)から,1790年にイギリスのクローフォードAdair Crawford(1748-95)によって発見されたのでこの名がある。融触塩の電気分解によって,金属単体としてはじめて取り出したのはH.デービー(1808)である。天然に存在する量はカルシウムよりはるかに少ない。ストロンチウム鉱物も上記のストロンチアン石のほか,天青石(硫酸ストロンチウムSrSO4を主成分とする)がおもなものであるが,他のアルカリ土類金属の鉱物中にも少量ずつ含まれて産出する。金属は塩化ストロンチウムSrCl2をそのままか,あるいは塩化ナトリウムを加えて融解して電気分解するか,酸化ストロンチウムSrOをアルミニウムで還元して得られる。

性質・用途

銀白色の軟らかい金属で,化学的性質はカルシウムとバリウムに似て,その中間の挙動を示す。すなわち原子の最外部にある2個の5s電子を失って2価の陽イオンSr2⁺になりやすく,これが種々の陰イオンと無色のイオン結晶をつくる。フッ化物,炭酸塩,シュウ酸塩,硫酸塩,リン酸塩などは水に難溶,フッ化物以外のハロゲン化物,硝酸塩,酢酸塩などは可溶。水酸化物Sr(OH)2・8H2Oは20℃で100gの水に1.74g溶け,強アルカリ性である。水酸化物や塩類は一般にカルシウムの場合よりも熱分解を起こしにくい。なお金属は空気中で徐々に酸化されて白色の皮膜でおおわれ,熱すれば盛んに燃えて酸化物となるが,窒素とも化合して窒化物Sr3N2をつくりやすく,窒素中で加熱するとこれが生ずる。また金属は液体アンモニアに溶け,濃青色の溶液をつくる。このようにカルシウムやバリウムとの類似が著しいので,化学反応によってストロンチウムをこれらと区別して検出することはやや困難であるが,塩類は深赤色の炎色反応を示すので,これによって他の金属と識別される(アルカリ金属のルビジウム,リチウムもやはり赤色の炎色反応を示すが,それらとの区別は塩類の溶解度によって容易にできる)。この炎色反応は花火の赤色光や,夜間信号用の照明弾などにも利用される。ストロンチウムの化合物には,そのほか薬用(脱毛剤)などの用途もある。生物学的にはバリウムほどの毒性はないが,人体に取りこまれるとカルシウムと行動をともにして骨に集まり,蓄積される傾向がある。

曽根 興三

放射性ストロンチウム

ストロンチウムには質量数78から94まで19の同位体があるが,そのうちの15は放射能をもつ放射性同位体である。そのなかで代表的なストロンチウム9090Srは核分裂生成物であり,大気圏内原水爆実験に際しての放射性降下物中に含まれ,半減期が27.7年と長いこと,体内ではカルシウムに似て消化管から吸収されると骨に集まり,そこで放射線に感受性の高い骨髄を長期にわたり照射することなどから注目された。原子力発電所等の原子炉内でも生成されるが,環境中に放出されることはない。90Srはβ崩壊してイットリウム9090Yに変化し,90Yも2日半の半減期でβ崩壊し,安定なジルコニウム9090Zrに変わる。通常,90Srと90Yとは放射平衡になっている。90Yのβ線は高いエネルギーをもつことから,工業用あるいは医学・生物学研究用の線源として使用されることがある。

稲葉 次郎
周期表
周期表