平凡社 世界大百科事典

スタッコ

建造物の内外に塗りつける左官材料。ストゥッコとも呼び,化粧しっくいと訳される。通例,消石灰に大理石粉,粘土粉,砂,顔料などを混入して練ったもので,細工するときは軟らかく,硬化すると耐久性をもち,現在多用されているセメント・モルタルもその一種である。古代の日乾煉瓦造の建物では,はじめ表面に泥を塗って保護したが,やがて石灰スタッコで塗り上げ,白い滑らかな壁面とすることが一般化した。ギリシア人は,大理石以外の多孔質の石材を用いて建てるときは,大理石の細粉を混じたスタッコを塗って磨き上げ,大理石に近い表面をつくり出す技術を完成した。しかし,スタッコ技術をさらに発展させたのはローマ人で,セッコウに形つけした各種の彩色浮彫装飾を天井や壁面に張りつけたり,セメント・モルタルを用いて浴室の内壁や耐候性の高い外壁をつくったうえ,木ずりや木骨に塗りつけて軽量のボールトもつくっていた。これらの技巧はルネサンス時代に復活した。まず,室内の彩色スタッコ装飾が隆盛となり,次いで建築家J.ナッシュが,煉瓦造スタッコ仕上げの外壁にさらにペイントを塗った建築を普及させ,〈リージェンシー・スタッコregency stucco〉という名で知られている。また,いわゆるコロニアル・スタイルの建築では,木造建築をスタッコ仕上げによって煉瓦造や石造に見せかけることもしばしば行われた。日本で広く行われている木造モルタル塗りの建築は,それを簡易な防火構造として普及させたものである。

桐敷 真次郎