平凡社 世界大百科事典

チョウザメ

チョウザメ目チョウザメ科Acipenseridaeの魚の総称。サメという名がついているが硬骨魚であってサメ(軟骨魚)の仲間ではない。体は延長した紡錘形で,吻(ふん)は突出して長く,先端がやや扁平になっている。口は吻の腹面にある。上下両あごとも歯はない。口の前方には左右2対のひげが1横列をなして並んでいる。外鼻孔は吻の各側に2個あり,内鼻孔はなく,噴水孔がある。腹びれは腹の位置にある。背びれは1基で体の後方にある。尾びれは歪尾で,上葉が長い。体表には背中線,体側および腹側に大きなひし形板状の硬鱗が5縦列をなして並んでいる。うろこは中央に突起があり,その形がチョウ(蝶)に似ていて,チョウザメの名もこれに由来するとの説がある。骨格はほとんど軟骨性で,脊椎には椎体がなく,脊索は成魚になっても円筒状をなしている。

 ユーラシア大陸と北アメリカの寒帯から温帯にかけて分布し,亜寒帯以北に多く,24種が知られている。川や湖にすむ種類と海にすむ種類とがあり,比較的小型のものは終生河川内にすみ,産卵期には細流に遡上(そじよう)するが,海洋にすむものも産卵期になると河川を遡上する。産卵期は春から初夏の候で,粘着性の卵を水底の水草などに産みつける。孵化(ふか)した仔魚(しぎよ)は吻端の吸盤で地物に吸着して,水流中で流されるのを防ぐ。チョウザメ類はすべて底生性なので,底生のイトミミズ,カニ,エビ,貝,小魚などを餌として捕食する。日本付近にすむ種類はさして体の大きいものがないが,旧ソ連地域のHuso属のチョウザメには全長8mを超すものもあることが報告されている。卵巣卵の塩蔵品はキャビアとして珍重され,カスピ海産の製品が最高級品とされている。肉は薫製,煮物などとして食膳に供される。

 チョウザメAcipenser medirostris(英名green sturgeon)はミカドチョウザメとも呼ばれる種類で,本州北部から北海道,サハリン海域に分布する。体はやや円筒形で,背側は青灰色を呈し,腹側は淡色。全長1.5m内外。昔は産卵期の4~5月には北海道の石狩川,天塩川に群れをなして遡上したが,近年は著しく減ってしまった。川にさかのぼった親魚はひげで底生生物の所在をさぐり貪食(どんしよく)する。卵は約1週間で孵化(ふか)し,稚魚は秋まで川で過ごして海に下る。日本付近にはそのほかカラチョウザメ,アムールチョウザメ,ダウリチョウザメなどが知られている。

日比谷 京
図-チョウザメ
図-チョウザメ