平凡社 世界大百科事典

スチレン

芳香族炭化水素の一つ。スタイレンとも呼ばれ,またスチロールstyrol,ビニルベンゼン,フェニルエチレンなどともいう。天然樹脂である蘇合香(そごうこう)styraxから発見されたのが名称の由来である。特異な芳香のある無色,引火性の液体で,空気中で燃えるとき芳香族化合物特有の黒いすす(煤)を出す。融点-30.69℃,沸点145.2℃,比重d425=0.9019。爆発範囲1.1~6.1%(空気中の容量%)。フェニル基に置換された二重結合は反応性に富み,種々の試剤の付加を受けやすい。室温では光や空気により徐々に重合し,熱や過酸化物により容易に重合する。保存は,不活性気体中,冷暗所で行い,ブチルカテコールなどの重合禁止剤を微量加える。

 石炭乾留や石油の高温熱分解の生成物中に少量存在するが,工業的には,ベンゼンをエチレンでアルキル化してエチルベンゼンをつくり,それを脱水素して製造される。

反応(1)では,塩化アルミニウム,リン酸,あるいはゼオライト(沸石)などの酸触媒が用いられる。反応(2)は,鉄,クロム,亜鉛などの酸化物を触媒として,600℃前後の温度で,やや減圧下で行われるのがふつうであるが,酸素を用いて水の形で水素を除くABS樹脂(アクリロニトリル,ブタジエンとの共重合体,強く硬い熱可塑性プラスチック)などである。

村井 真二+冨永 博夫