平凡社 世界大百科事典

サブカルチャー

下位文化,あるいは副文化と訳され,ある社会に支配的・伝統的な文化main cultureに対置される。サブカルチャーはある集団に特有の価値基準によって形成されることで支配的文化との矛盾・対立を暗示する。subcultureの語は1950年代後半に,アメリカの社会学における少年非行研究で用いられた。その非行下位文化理論theory of delinquent subcultureでは,労働者地区特有の非行少年の特徴を,非功利性,破壊趣味,否定主義,集団的自律性などに見いだし,中産階級本位の競走的社会に対する,欲求不満の裏返しとしての一種の自己主張とした。

 しかし,1960年代後半にこの意味は変化した。対抗文化counter culture〉としての性格をももつようになった。この意味でサブカルチャーは,現代文明社会を認識するうえで,新しくてこれまでよりも自由な方法論を反映しているといえよう。

高田 昭彦

動物におけるサブカルチャー

人間以外の動物の行動のうち,非生得的で社会生活を通じてその集団の成員間に獲得,伝播(でんぱ),伝承され,集団の全成員,またはその一部に分有される行動をいう。インフラヒューマン・カルチャーinfra-human culture,プレカルチャーpre-culture,プロトカルチャーproto-cultureなどとも呼ばれる。サブカルチャーは,とくに言語が介在しないがゆえに人間社会の文化(カルチャー)と区別されるが,リントンR.Lintonの〈習得された行動と行動の諸結果の総合体であり,その構成要素がある一つの社会のメンバーによって分有され伝達されているもの〉というカルチャーの定義からすれば,両者は区別できない。

 サブカルチャーは,動物の行動にも人間の行動と共通のものを見いだし,行動の進化的側面に着目しようという意図のもとに,ニホンザルの群れにサブカルチャーに該当する行動が次々と発見され,この現象の研究は日本の霊長類学の中心的テーマの一つとなった。その例としては,宮崎県幸島の群れで見られた〈イモ洗い行動〉,大分県高崎山の群れの〈キャラメル食い〉などが有名である。これらはそれまでそれぞれの群れに見られなかった行動であるが,最初に若い個体によって獲得され,それが血縁関係にある個体や遊び仲間など,とくに親しい関係を通じて徐々に群れ全体に伝播していった。さらにこれらの行動を獲得した母親から新生児へは,より確実により短時間のうちに伝承されていき,その群れのサルたちの新しい習性として定着していった。こうした行動の伝達は,習得者から何らかの働きかけがあってなされるわけではなく,非習得者の能力だけに依存している。

 ニホンザルの自然群においても,群れによって食物の種類や,人間に対する態度,性行動のパターンなどに違いが見られるが,それらの多くはサブカルチャー現象として説明される。野生のチンパンジーにも,食性,道具使用の行動など,地域集団によるサブカルチャーの違いが認められている。サブカルチャーの伝達に関して,今西は,若い個体が自己をあるおとなのサルに同一視し対象の行動型を全的に獲得するメカニズムを想定して,アイデンティフィケーションidentificationと呼び,群れ中心的な社会的行動の伝承を説明しようとした。

黒田 末寿