平凡社 世界大百科事典

沈水植物

水草のうち,植物体全体が水面下にあり,根は水底に固着している植物。水は光をよく吸収するので,水中では深くなると光が届かなくなる。沈水植物の中で最も耐陰性があり深くまで分布するのはシャジクモ・フラスコモ(車軸藻)類であるが,それでも湖沼の夏季の透明度(直径25cmの白色円板が水中で見えなくなる深度)の2倍程度(相対照度で約1%)が分布下限になる。湖沼で水草が岸から沖へ帯状に分布する時,沈水植物帯は抽水植物帯や浮葉植物帯よりも沖にできる。これは,水面をヒツジグサのような浮葉植物やヨシのような抽水植物がぎっしりと占めれば,水面下にあり光をめぐる競争で不利なイバラモ,ネジレモなどの沈水植物は生育できないためと考えられる。水中では水の動きがなければ酸素の拡散は遅く,静水中では酸素不足が生じうる。沈水植物は水草の中でも,嫌気的条件そのものに対する生理的な耐性が大きいことが知られている。また,沈水植物にも他の水草と同じように,葉や茎の組織に細胞間隙(かんげき)が発達している。水面上にでない沈水植物にとって,細胞間隙は水面上からの通気のためには働かないが,光合成が主体の日中と呼吸だけの夜間との間で相互に酸素と二酸化炭素をためて利用しあうための気体の貯蔵に,細胞間隙が役立っていると考えられ,そのことは細胞間隙でのそれぞれのガス濃度に日変化がみられることからもうかがわれる。

藤田 昇