平凡社 世界大百科事典

横隔膜下膿瘍

横隔膜は胸腔と腹腔との境をつくる板状の筋肉で,上方にふくらんでいる。右の横隔膜の下には肝臓が,左の横隔膜の下には胃と脾臓がある。中央を大動脈,大静脈,食道が貫いている。横隔膜と肝臓の間に,あるいは胃や脾臓との間に限局的に膿が貯留したものが,横隔膜下膿瘍である。多くは化膿性腹膜炎の結果起こってくるもので,その原因疾患は急性虫垂炎,急性胆囊炎,胃・十二指腸潰瘍の穿孔(せんこう)性腹膜炎などである。症状は,ふつう弛張性(1日の日内変動が1度以上あるもの)の高熱で悪寒戦慄があり,上腹部や背部の疼痛が強く,白血球数は増加する。しかし徐々に発症してくるものでは,体温の上昇もなく診断はむずかしい。この場合,局所の叩打(こうだ)痛や患側の肩痛が診断を助ける。また胸膜炎を併発し,胸部レントゲン写真で診断のつくことがある。胸水は黄色透明で無菌である。治療は切開して排膿することで,術後膿をためないためにゴム管などで体外へ膿の誘導(ドレナージ)を行う。そのほか適正な抗生物質を使用する。

立川 勲