平凡社 世界大百科事典

置換

一般に,化合物分子に含まれる原子または原子団が他の原子または原子団に置き換えられる反応。置換反応とも呼ばれる。置換には求核置換反応nucleophilic substitution(略称SN)と求電子置換反応electrophilic substitution(略称SE)の2種類がある。前者SNは求核試薬nucleophile(N⁻)が置換されやすい原子または原子団(X)をもつ分子(M-X)を攻撃して,Xを追い出す反応をいう(式(1))。

 M-X+N⁻─→M-N+X⁻ ……(1) 

この反応では反応の中間状態の違いにより二つのタイプの反応形式に分類される。まず一つは,中間状態で,

 [N…M…X]⁻ ……(2) 

(2)のような,M-X結合が切れながらN-M結合が同時に形成されるタイプのもので,これは反応速度論で,速度式がN⁻の濃度とMの濃度に比例するので二分子反応として分類され,二分子求核置換反応bimolecular nucleophilic substitution(略称SN2)と呼ばれる。N⁻としてI⁻,Br⁻,⁻OCH3,CN⁻,⁻SRなどがある。たとえば,(3)式に示す反応はこのタイプのものである。

 NaI+CH3Br─→CH3I+NaBr ……(3) 

もう一つのSN反応は(4)式に表されるタイプのもので,形式的にはSN2反応とまったく同じであるが,反応速度がMXの濃度のみに比例する。

この反応では中間にカルボカチオンが生成し,最終的にベンゼン環の1個の水素がニトロ基で置換された生成物が得られる。

友田 修司