平凡社 世界大百科事典

急死

元気であった人が突然に死亡することで,突然死あるいは頓死ともいう。急死はその死亡原因の由来により,外因性急死と内因性急死に分けられるが,一般に急死といえば内因性急死をさす。

外因性急死

体外から作用した原因による急死。絞殺や扼殺(やくさつ)などの窒息急死,刃物によって大血管や臓器が損傷され,大出血して死亡する失血急死,交通事故や災害の際に,頭部が挫砕されて生じる脳損壊による急死,やけどや感電による急死,催眠剤や農薬などの薬毒物による中毒急死などがある。

内因性急死

体内の原因による急死。心臓に起因する急死(急性心臓死)には,心臓の病気によるものと,心臓に死因となるような病気のない心臓の機能障害によるものがある。病気によるものとしては,心臓の冠状動脈の硬化症(冠不全),心筋梗塞(こうそく),心筋炎などがあり,心臓の機能障害を生じる原因としては,恐怖などの強い精神感動,睾丸や心窩(しんか)部(みぞおち)の強い打撃,疼痛,頸動脈洞の圧迫などがある。また,原因不明の急性心臓死といわれるものもあり,〈検死

小嶋 亨

乳幼児急死

乳幼児の急死は,法医学上はとくに乳幼児急死sudden infant death(SIDと略す)として扱われる。乳幼児の急死には,(1)死亡の可能性のあるなんらかの疾患(たとえば先天性心疾患,奇形など)に罹患していて病状が急に悪化して死亡する場合と,(2)外見上健康と思われていた乳幼児,あるいは軽症疾患で死亡などはまったく予測できなかった乳幼児が,きわめて短時間内に死亡する場合に大別できる。諸外国および日本で,とくに上記(2)の乳幼児の急死(突然死)が問題になっており,急性不測死sudden unexpected death(SUD)といわれることもある。SUDは生後6ヵ月以内の乳児が大部分を占め,ことに生後1~4ヵ月の乳児に多い。頻度は欧米では乳児1000に対し1~2人で,乳児死亡の10~20%といわれ,日本の調査では乳児1000に0.5~1人の割合である。一般に男児にやや多い。母乳栄養児に比して人工栄養児に多く,出生時の体重で低体重児に多い傾向があり,季節的には冬と夏に多いが,地域差もある。死亡状況は〈寝かせていたら死んでいた〉という場合が非常に多く,crib deathあるいはcot death(ベビーベッド上の死亡)という語が使われるほどである。突然死の90~95%は睡眠中に死亡しているという報告もある。突然死の本態はまだ明らかではないが,窒息,気管支炎および肺炎などの気道感染,心疾患,過敏症などがあげられている。これらのうち,うつ伏せのものが多いことから,窒息が最も頻度が高く,寝具や衣類などによる鼻口部の偶発的な圧迫や吐物の誤嚥がその原因として考えられている。また,急死例の約1/3には死亡前1週間以内に感冒症状などなんらかの軽度の感染の形跡がみられることから,気道感染のうち,間質性肺炎が重視されている。

龍野 嘉紹