平凡社 世界大百科事典

硫黄細菌

硫黄あるいは無機硫黄化合物を酸化する細菌。亜硝酸菌などと同様,無機物を基質として好気呼吸をおこなう独立栄養細菌の仲間で,硫黄の酸化を化学的暗反応によりおこなう菌のうち,代表的なものは無色硫黄細菌のチオバチルスThiobacillusである。これはグラム陰性菌で極性鞭毛によって運動する。28~30℃で最もよく発育し,酸性を好むものから弱アルカリ性を好むものまで発育pHの幅は広い。海水,海泥,淡水,汚泥そのほか硫黄化合物の多いところにみられ,硫化水素(硫化物),固体硫黄,亜硫酸塩,チオ硫酸塩,ポリチオン酸塩などを基質として酸化している。古くから硫黄細菌として広く知られているベギアトアおよびチオスリクスThiothrixは桿(かん)状細胞が集まって糸状体を形成しているもので,硫化水素存在下ではこれを酸化し,硫黄を体内に蓄積している。水溝によくみられる。以上の暗反応をおこなう菌のほか,光化学反応を利用する紅色硫黄細菌や緑色硫黄細菌などの光合成細菌がある。

椿 啓介