平凡社 世界大百科事典

状態和

統計力学で重要な役割を演ずる関数で,分配関数partition functionともいう。いま,一定の粒子数,体積をもつ体系(気体,液体,固体など)が絶対温度Tの熱源と接触して熱平衡状態にあるとする。この体系の量子力学的なエネルギー固有値をEnn=1,2,3,……)とするとき,

で定義されるZを状態和という。ただし,kはボルツマン定数である。上式のように,すべての可能な状態に関して和をとるので,状態和という名称がつけられた。状態和が計算されると各種の熱力学的な関数が求められる。例えば,ヘルムホルツの自由エネルギーFは,F=-kTlogeZの関係により与えられる。これは統計力学における一つの基本的な公式で,体系の微視的な挙動と熱力学的な性質とを結ぶいわば懸橋のようなものである。粒子間に相互作用がない理想的な体系では,状態和の計算は比較的簡単である。しかし,相互作用のある場合には,相互作用を弱いとみなして摂動展開を利用したり,あるいは数密度のべき級数で表したりして状態和が求められている。ノルウェー生れのアメリカの物理学者オンサーガーLars Onsagar(1903-76)は1944年,二次元イジング模型の状態和を厳密に求めたが,これは相互作用のある系の状態和が近似なしに計算された数少ない例である。

阿部 龍蔵