平凡社 世界大百科事典

夏至

二十四節気の一つ。太陽がその軌道上でもっとも北に位置するとき,すなわち黄経90°にあって春分点と秋分点の中間にある。地球の北緯23°30′の北回帰線では真上に太陽を見,日本のような北半球にあっては太陽の南中高度はもっとも高くなり日影はもっとも短くなる。そして昼間時間は最長に夜間は最短になる。現行の太陽暦では6月21日ころになるが,旧暦では夏至を含む月を5月とするという規則があった。

内田 正男

ヨーロッパの民俗

太陽神崇拝がゲルマン人の間にあったことはカエサルの記述からも知れるが,キリスト教公認後は早くから夏至は聖ヨハネ祭(6月24日),冬至はクリスマスにとって代わられた。しかし聖ヨハネ祭の風習は古い伝統的なものを数多く残している。夏至の日には,神聖な太陽が天の頂点に達し,静止して耕地に恵みを与えたのち引き返すと信じられていた。このため盛大な夏至の祝火をたいて太陽に加勢し,耕地と家畜の繁栄を祈り,悪霊をはらおうとした。この風習は19世紀中ごろまで全ヨーロッパで行われ,とくに南ドイツで盛んだった。聖ヨハネの日の前夜に,山の上や野原,ときには十字路や広場で祝火がたかれる。全村をあげての行事で,男子があらかじめ木やわらを集める。積み上げた薪の点火をフランスでは聖職者や長老が行い,ノルマンディー地方では,太陽が地平線に沈む瞬間に点火したという。祝火はよい収穫をもたらし,これを行わないと畑に被害が及ぶ。火と煙がまっすぐ上にあがればあがるほど果樹の収穫がよく,発する火花の多いほど穀物の収穫が多いとされた。火は空気を清め病気や悪霊を追い払う。このため人々は火のまわりを踊り回り,下火になった火の上を跳び越える。跳んだ者は一年中息災で熱病,腹痛,背中の痛みから解放される。若い男女が手をとりあって手をはなさずに跳ぶと結婚できるという。高く跳ぶほど穀物や亜麻がよく育つ。家畜も火の中を通すと病気にかからない。悪魔や魔女をはらうため祝火の中でわら人形の魔女を焼く風習も広く各地で見られる。残り火を家にもって帰ると幸運をもたらすとされ,それでかまどの火を新しくした。車輪にわらをつめ,火をつけて山上から谷へ転がし落とす〈車輪落し〉や,板製の円板に火をつけて飛ばす〈円板飛ばし〉も,同じように収穫をよくする働きがあるとされた。夏至の日には泉を清める行事もあり,薬草さがしや宝さがし,占い棒さがしにもよい日とされた。なお,聖ヨハネ祭の前夜には,妖精(ようせい),魔女,死霊,生霊などが,この地上に姿を現すと信じられ,シェークスピアの《真夏の夜の夢》も,そのような伝承を背景として生まれたものである。

 日本では農事との関連で,ヨハネ祭

谷口 幸男