平凡社 世界大百科事典

日焼け

日光の中の紫外線の刺激によって皮膚が赤くなり,その後に色素沈着が起こった状態。太陽からの紫外線のうち290nm以下の波長の紫外線はオゾン層で遮断されるので,それ以上の波長の紫外線が地上に達する。日焼けの炎症反応を起こすのは,このうち波長290~320nmの中波長紫外線である。体に当たった紫外線の大部分は表皮で吸収されるが,約10%が表皮の下の真皮に達するといわれている。紫外線が深部に達するのを保護する作用としては,表皮角層の反射作用,表皮内の散乱作用があるが,最も重要なのは表皮基底層に存在するメラニン色素による吸収作用で,これにより光線が深部に入るのを防いでいる。しかし,このような皮膚の防御能力を超えて,過度の紫外線に照射された場合,皮膚は障害を起こす。これが一般にいわれる日焼けで,医学的には日光皮膚炎solar dermatitisという。晴天下の海水浴,スキー,戸外労働などではよく起こり,色の白い人のほうが色の黒い人より起こしやすい。午前10時ころから午後2時ころまでの日光が最も強い作用をもつ。日光に当たった部分は赤くなり,日焼けは6~12時間で最高となり,痛みと灼熱感があり,症状の強いときには水疱も生ずる。最も重い場合には,発熱,吐き気,頻脈,意識混濁などを合併することがある。2~7日で皮がむけるが,あとに褐色の色素沈着を残し(これをサンタンsuntanという),約10日後には最高となる。こうした日焼けの発生機序については,まだ十分にわかっていない。日焼けの軽い場合にはとくに治療の必要はないが,重症の場合にはやけど(熱傷)と同様の治療を行う。すなわち,局所を冷やし,症状に応じて抗生物質や副腎皮質ホルモン剤の軟膏を使う。日焼けの予防としては,遮光のために,パラアミノ安息香酸やベンゾフェノンを含む〈日焼止め〉(光線遮断剤,サンスクリーン)が使われる。長期間にわたって日焼けを繰り返していると,皮膚の結合組織が障害されてしわの多い皮膚となり,さらに前癌症状や皮膚癌を発生しやすくなるので注意すべきである。また,少量の日光光線でも日焼けを起こす場合を光線過敏症というが,遺伝性の色素性乾皮症,ポルフィリン症などの代謝異常症,エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病,薬剤による薬疹の一種など,特殊な病気がひそんでいることも考えられるので,診察・検査をうける必要がある。

藤澤 龍一