平凡社 世界大百科事典

スンナ

イスラム以前では,この語は各部族の〈先祖代々踏みならわされてきた道〉の意に用いられていた。コーランでは,〈昔の人々のやり口〉〈慣行〉(8:38,35:43など),〈神の慣行〉(17:77,33:62など)のように,神に遣わされた使徒たちを否認し迫害して受けた神罰に関連して用いられている。イスラムにおける最も典型的な用法は,〈預言者のスンナ〉つまりシャーフィイーである。とはいえ,このことはシャーフィイー以前にムスリムの模倣すべき〈預言者の範例〉としてのスンナの観念がまったくなかったということを意味するものではない。ただそれは〈生きた伝統〉の中に暗黙のうちに存在していたとみるべきであろう。

 このほかスンナの語は,イスラム法規範の効力についての五つのカテゴリーの第2のマンドゥーブ(義務ではないが望ましい)と同義に用いられる。

中村 廣治郎
平凡社 世界大百科事典

スンナ派

ハンバル派の四法学派が共同体的承認を得てスンナ派の公的学派として確立し,今日に至っている。したがって,スンナ派ムスリムとは,形式的には〈六信〉と呼ばれる基本的信条,すなわちアッラー,天使,啓典,預言者,来世(アーヒラ),予定を受け入れ,〈五行〉ないしは〈五柱〉と呼ばれる基本的義務,すなわち信仰告白(シャハーダ),礼拝,喜捨(ザカート),断食,巡礼を果たし,四法学派のいずれかの法学派に従って日常生活を規制する人々のことをいう。

 シーア派がイマームの不可謬説をとるのに対して,スンナ派はイジュマーの不可謬説をとる。このことは,コーラン解釈の最終的権威が共同体全体にあることを意味し,〈スンナと共同体の民〉として,また絶対多数派・体制派としてのスンナ派が共同体の統一とその合意をいかに重視したかを示している。

中村 廣治郎