平凡社 世界大百科事典

スーパーマーケット

1929年の大恐慌のあとをうけた30年代の不況期のアメリカで,とくに食料品部門を中心として発展した小売形態であり,A & P社がとくに有名である。発達した理由としては次のような事情が考えられる。(1)大量生産方法が確立し,これが一般日常商品の分野にまで浸透して標準化商品が登場するようになったこと,(2)マスコミの発展の結果,宣伝・広告など情報伝達の手段が豊富になったこと,(3)核家族化が進行したばかりでなく,女性の社会進出が進んだため簡便な購買方法が好まれるようになったこと,(4)自動車が普及したためワンストップ・ショッピングへの志向が高まるとともに,みずから持ち帰ることが容易になったこと,などである。

 このスーパーマーケットは,セルフサービス方式を小売業に初めて導入したという点ばかりでなく,冷凍技術といった食品保存技術を著しく発展させることにより,それまで複雑で困難であった生鮮食料品の大量販売を可能にしたという意味で,チェーン・ストアと並んでアメリカにおける小売業の三大革新の一つといわれている。その特徴は,(1)入口で手押車ないし手提げ籠をとって店内に入る,(2)肉類,生鮮食料品など一部の売場を除いては店員がいない,(3)商品は一定の順序に従ってすべて客の手の届くところに陳列されており,客は品物を手にとって自分で確かめることができる,(4)商品にはすべて値段と必要な説明がはっきりと表示されている,(5)客は買いたい商品を自分で選び,手押車ないし籠に入れて出口まで運ぶ,(6)客は出口のキャッシュ・レジスターで勘定を済ませ,紙袋に入れた商品を受け取り自分で持ち帰る,などである。こうしたキャッシュ・アンド・キャリー(現金支払と持帰り)方式の簡便さと価格の安さのため,このスーパーマーケットはその後著しい発展を遂げ,現在では世界的に普及した販売方法となるに至っている。このノウ・ハウは,今日では食料品以外の商品分野にも積極的に導入されているほか,百貨店などにおいても一部で応用されるなど,多面的に利用されている。

 このスーパーマーケットの定義は必ずしも明確ではない。セルフサービスを原則とする高度に部門別に組織化された最寄品の大規模な廉売店であり,またチェーン・ストア形式をとるものが大部分であるが,その店舗規模の大小によって大きなものはスーパーマーケット,小さなものはスーパレットsuperetteと呼ばれることもあり,フランチャイズ方式で行われているコンビニエンス・ストアのような小型店もスーパーマーケットの一種である。また,その売上げの50%以上を衣料品・雑貨などが占める場合にはスーパーストア,さらにその巨大なものは総合小売店(ゼネラル・マーチャンダイズ・ストア,GMS)と呼ばれている。また日本では,食料品を扱う店舗がスーパーマーケットであることには変りがないが,衣料品,雑貨などの日常用品のチェーン形式による販売店をスーパーと呼んでいるため,両者の関係が若干紛らわしい。このスーパーマーケットを消費者側からみると,(1)自由に手にとって商品の選択ができる,(2)価格が安く,しかも表示が明りょうである,(3)小口販売を行っているため必要量だけの購入が可能である,(4)店員にわずらわされることがない,などの利点がある。しかし,(1)商品が規格化されているため,これにみずからを適合させねばならない,(2)ある程度の商品知識を必要とする,(3)義務的な買物という感じでショッピングの楽しみがない,などの欠点もある。したがって今日の消費者は,日用品,必需品,規格品といった生活必需品はスーパーマーケットで購入し,買回り品,専門品は百貨店とか専門店で購入する習慣を身につけるようになっている。

 日本における第2次大戦後の流通革新は,1960年ころから普及しはじめたこのスーパーマーケットに始まっている。72年にはそれまで小売業の首位を占めていた小売店

鳥羽 欽一郎