平凡社 世界大百科事典

バカガイ

バカガイ科の食用二枚貝。別名ミナトガイ。殻は長さ8.5cm,高さ6.5cm,膨らみ4cmに達し,丸みある三角形。やや薄質で灰白色。殻表の成長脈は前・後部でははっきりしている。黄褐色の皮で覆われる。また幼貝のときは放射状の淡褐色の色帯があるが,成長すると消える。しかし,北海道など北方では成貝でもそれが残り,この型をエゾバカガイM.c.carneopictaという。軟体は朱色で足は斧形。とると弱くて,死にやすく,殻をあけてこの足をだらりと出すので,これを馬鹿者が舌を出しているのに見たてて名づけられた。むき身をアオヤギ(青柳)というのは,昔上総国青柳村で多くとれたことに由来する。貝柱はとくに美味とされ,江戸のしり取り歌にも〈…うしろ向き,むきみはまぐり,馬鹿はしら,柱は二階…〉といわれている。乾製品のうちで,そのまま干したのを桜貝,足を細く引きのばしたのを姫貝という。サハリンから九州,朝鮮半島,中国沿岸まで広く分布し,内湾の潮間帯より水深20mの細砂底にすむ。産卵期は5~7月。殻長は3年で6.6cm,5年で9.7cmになる。採取時期は12月から翌年4月。春の季語。

波部 忠重
図-バカガイ
図-バカガイ