平凡社 世界大百科事典

界面化学

気体-液体,気体-固体,液体-液体,液体-固体,固体-固体など,物質の界面に特有な構造,性質,またそこで起こる種々の物理化学的現象を扱う化学の一分野。液体や固体の表面(空気との界面)では,それらの物質の内部とは異なる特別の性質がみられる。たとえば液体の表面では,表面の分子は内部の分子による吸引力をうけるので,表面はできるだけ収縮しようとする傾向をもち,界面電気現象の原因となる。固体-液体の界面現象には,洗浄,接着,染色,防食,潤滑,浮遊選鉱など実用的に重要なものが多い。

 物質を分割して微細な粒子とすると,その比表面積は増大し,界面が著しく発達する。たとえば水中に油滴や固体粒子が分散した状態,とくにコロイド粒子と呼ばれる微細な粒子が分散したエマルジョン(乳濁液)やサスペンジョン(懸濁液)では,液体-液体あるいは液体-固体の界面が非常に発達し,界面の性質がきわめて重要な役割を果たすことになり,界面化学はこれらの系の性質を理解するための基礎となる。界面化学の発展にとって重要な意味をもつ業績を挙げると,T.ヤングの表面張力による毛管上昇の解釈(1805),ウィルヘルミL.F.Wilhelmyの表面張力の測定(1863),J.W.ギブズの吸着理論(1878),H.L.F.vonヘルムホルツの電気二重層理論(1879),フロイントリヒH.M.F.Freundlichの吸着式(1906),I.ラングミュアの単分子吸着理論(1916)と水面上の配向単分子膜の研究(1917)などがあり,これらの研究は,それ以後着実に発展し,界面化学は20世紀の初めには,物理化学の一部門として確立された。化学工業の広い分野に応用されるばかりでなく,多くの自然現象の理解にも役立つ。とくに生体は複雑な細胞からなり,きわめて発達した界面をもつ物質系とみなすことができるので,生体内の諸現象の理解にも界面化学は欠くことのできないものである。

妹尾 学