平凡社 世界大百科事典

サージング

元来,大波が打ち寄せることであるが,機械工学の用語としては,次の二つの現象に対して用いられることが多い。

(1)流体機械のサージング ターボ形のポンプ,送風機,圧縮機などを回転数一定のまま運転し,流量を減少させていくと,揚程,または圧力比(出口圧力と入口圧力との比)はしだいに増大するが,最高効率点付近で最大値に達した後,その値は減り始め,流量-圧力比(または揚程)の関係で示す特性曲線(図-aの圧力線)が右上がりになる場合がある。この領域で運転すると,流量や圧力が数サイクルの周期で激しく変動し,安定な運転が不能になることがある。この現象をサージングといい,とくに作動流体が気体の場合,圧縮性のために激しくなる。ポンプとタンクおよびその連結管からなる系(図-b)を例にとると,サージング発生の原因として,以下に述べるような管系の抵抗状態と管内流れとの不均衡による運転状態の時間的変化が考えられる。いま急にタンクの水位が⊿Hだけ下がると管路抵抗が低下するが,ポンプの吐出量(タンクの流出量)Qdはそのままでポンプ揚程も変わらないため,連結管内の流速が加速される。したがって同管内の流量は吐出量以上となり管路抵抗は大きくなるが,タンク水位は上昇し始める。その際のポンプの運転点は,図-aに示すように矢印の方向へと移動し始める。運転点の軌跡(運転線)はそのままポンプの特性曲線上(ポンプ揚程と管路系の抵抗値が等しい)を横切り,それに伴って水位上昇が続くが,管路内の抵抗が増えるためその内部の流速が減少し,最初の流量に戻る。しかし,この時点でのタンク内水位はポンプ揚程以上であり,管路抵抗も高いので,吐出流量は抑制され,しだいにタンク水位も降下する。さらにポンプの特性曲線上を通過し下降し続けると,今度は連結管内の流れが加速され始め,やがて再び最初の流量に戻る。このような運動状態が図に示すようなループで繰り返され,やがて1サイクルごとに自励振動的に発散していくときサージング現象が起こる。これは特性曲線の右上がり部で起こりやすい。すなわち,図-aの0<QQcの範囲では,流量が増すと吐出圧も増大し管路抵抗を上回るため,流量は増大しやすく,逆に流量を減少すると吐出圧は低下し,管路抵抗以下となり流量が減少しやすくなる。これは流れの不安定性を助長することになる。すなわち,右上がり特性領域での流体の振動流に対し,機械は負の抵抗として働き,振動のエネルギーを供給することになる。右下がりの範囲QcQではこれと逆になる。各回転数に対応する圧力曲線上でサージング開始点を結んだ曲線をサージング限界線と呼ぶ。以上のことからサージングを防止するためには,特性曲線の右上がり特性部分で使用するほかに,回転数による流量調節,大流量側で運転して余分流量はバイパスで抽気する方法を採用する。またポンプでは,配管中に気相部分が含まれると発生しやすいので,これに対する配慮も必要である。

有賀 一郎(2)コイルばねのサージング コイルばねに生ずる縦波による振動。コイルばねの一端を急激に圧縮すると,まずその端部のピッチが縮まり密な部分が生ずる。その密な部分は波動の伝搬速度で他端に伝わっていき,他端で反射してもとに戻り再び反射を繰り返す。波が1往復するのに要する時間と同じ周期で一端を加振すると,波は加振端で反射するたびに増幅され,共振を起こして大きな振動となる。この現象をコイルばねのサージングと呼ぶ。サージングを起こすと,ばねに大きな繰返し応力を与えることになり,疲労破壊を起こすことがある。また不快な騒音や振動の原因となる。サージングを防ぐには,コイルばねの固有振動数を加えられる振動の振動数よりも高くして共振を避けるとか,あるいはコイルばねの支持端に,波動を完全には反射させないで振動エネルギーを吸収する性質の物質,例えばゴムなどの材料を使用する。またコイルばねの線材全体をゴムで被覆してもよい。
井口 雅一
図-ポンプのサージング
図-ポンプのサージング