平凡社 世界大百科事典

測量

測量とは,互いに位置の異なる点の間の相対的位置関係を求めるものであるが,さらにこれら各点の位置関係やその他の資料を基礎として地図等を作成したり,土地の面積や体積等を求めるものもいう。また天文観測により地球上の観測点の天文学的な緯度,経度を求めるもの,あるいは地磁気,重力等を対象とした地球物理的な測定,河川の流速,流量等の測定,設計図上の点を地上に設定することなども測量の範囲に含めることが多い。

測量の歴史

西洋

測量の起源はエジプト王朝時代にさかのぼって求められる。当時のエジプト人にとってナイル川は生活の糧の源泉であったが,毎年おきる洪水は耕地等の土地の境界を破壊するものであった。この結果を原形に復するための境界の設定が必要となり,このための技術として測量技術が発達したものと考えられている。エジプト時代の測量機器,方法については簡単な測量縄,測量幹の使用以外に詳細は不明であるが,ギーザのピラミッド(前2500ころ)の建築技術,その基礎の方向から,測量の精度はかなり良いものであったことがうかがわれる。

 ギリシア時代には学問の進歩に伴い測量の分野でも発展がみられ,メトンMetōnによる方位の測定,エラトステネスによる地球外周長の測定があり,またヘロンによる経緯儀と水準器を組み合わせた測量器と考えられるディオプトラや歯車式の距離計についての記述,プトレマイオスによる天文観測用の象限儀(四分儀)についての記述が残っている。ローマ時代の測量手段はこれ以前のものと大きな差は見られないが,測量機器,方法の中部ヨーロッパへの普及が著しい。ローマ時代には道路網の整備や地籍調査が国家的に実施されているが,そのために重要な役割を果たしたのはグロマgromaとよばれる直角器の一種である。グロマは木の棒2本を互いに直交させ,その四つの腕の先からおもりをつけた紐をたらしたもので,その紐を使って照準を合わせることで角度を直角に合わせることができた。当時の土地の単位は矩形であったと考えられ,グロマと測量幹が当時の主測量器であった。中世時代の科学はおもにアラブ人により保持,向上させられていたが,測量部門では中世後期に至るまで若干の改良はあったにしても,一般にはこの時代以前のものが広く用いられていた。

 ルネサンスとともに測量技術にも大きな進歩があった。レオナルド・ダ・ビンチは距離測定車のデザインを描いており,またJ.F.フェルネルは1525年に測距車により長距離の測定を行い,弧長測量を実施している。この時代には地理学的発展,航海術の進歩に伴い,地図や測量データへの要求が一段と強まった。1530年ころにはオランダで現在の巻尺の元となった測量鎖が初めて用いられ,1600年ころには水平角測定装置が開発され,このような装置に初めてセオドライトtheodoliteの名称が記されている。平板測量器具はヘンマ・フリシウスRegnier Gemma Frisius(1508-55)により発明されたといわれ,それがプレトリウスJohann Praetorius(1537-1616)により広められた。

 17世紀に入ると多くの主要測量器が開発されている。すなわち,G.ガリレイやJ.ケプラーらによる望遠鏡の開発,テベノMelchisédech Thevenot(1620-92)による気泡管の発明などがある。また1617年にはオランダのスネルWillebrod van Roijen Snell(Snellius。1591-1626)により近代的な三角測量方式が実用化されるなど,測量方法にも進歩が見られる。18世紀になるとフランスでは土地測量による地籍の確定に関する法律が議会を通過し,これには三角測量法を用いると明記されるなど,測量の精度の向上が図られ信頼されるに至った。1795年にはC.F.ガウスが,ほとんど同時にA.M.ルジャンドルが,最小二乗法理論を発展させ測量データの精度を一層向上させた。この時代にはほぼすべての地上測量用器の基本は開発され,以後その改良が進められていたが,20世紀後半における電子工学の発展に伴い電磁波測距儀が開発され距離測量が広く用いられるようになったことと,写真技術の発達に伴う写真測量の発展に著しいものがある。さらに,人工衛星や電波星を利用した測量が開発されるに及び,測量手段は宇宙にまで発展している。

日本

日本における測量については,遺跡等から古墳時代にさかのぼるといわれている。大化改新(645)の際には土地制度として班田収授法が定められたが,土地の測量が重要な要素となっている。710年(和銅3)唐の長安にならって大和の北部に平城京が築かれた。平城京は南北約4.8km,東西約4.2kmの長方形で,市街は碁盤目状に道路で区切られており,中国大陸の文化とともにかなり進んだ測量技術が輸入されたものと考えられる。その後794年(延暦13)山背(やましろ)に平安京が築かれたが,これは平城京よりもさらに規模の大きなものであった。その後は江戸時代まで,奈良時代に作られた〈行基図(ぎようきず)〉が残されていたことから推測されるように,著しい測量技術,地図作成技術の進歩はなかった。

 江戸時代に入ると西欧式の測量器具や方法が伝えられたが,初期には鎖国の影響もあり,特記すべきものもなかった。中期に入り蘭学の発達が理学,医学等に及んだが,測量の分野でも特記すべき進歩があった。それは伊能図〉ともいう。忠敬の使用した主要な測量器具は折衷尺,間縄,方位盤,象限儀,羅鍼(らしん),量程車等であるが,測量結果の正確さは当時日本のみならずシーボルトら外国人にも高く評価された。幕府は1831年(天保2)全国の大名に国郡の境界,市邑,面積等を調査させ,自領の国図を作らせているが,これは38年に《天保国絵図》として完成した。〈伊能図〉は内陸各地の状況は必ずしも詳しくなかったので,この絵図はその地方版としての役割と考えられた。明治になり陸軍陸地測量部はこの2種の図を基礎として《輯製20万分1図》を作成し広く利用した。忠敬以後,武田簡吾は《輿地(よち)航海図》を作成し,また勝海舟が《大日本沿海略図》を,佐藤政養が《大日本精図》を編集している。

 明治に入ると兵部省,工部省等がおのおのの目的で近代的測量を開始したが,1878年陸軍参謀本部が設置され,ここに測量課,地図課が編成され,これより全国土を対象とした近代的な全国測量が始まった。この結果は大正末期になり日本全土の5万分の1図として集成され,長期にわたり国民に利用された。なお,測量課,地図課は,1888年陸軍陸地測量部となり参謀本部から分離,第2次大戦後は地理調査所(1960年より国土地理院)に引きつがれている。

測量の基本量と測量機器

2点以上の間の相対位置を求めるには,一般にこれらの点が共通に含まれる座標系を設定し,点間の座標差を測定する。2点が平面上であれば最少二つの測定量が,空間にあれば少なくとも三つの測定量が一般に必要である。この測定量として,角度と長さの二つの基本量がある。

角度

角度の測定は比較的容易であることから,望遠鏡の発明以来,数学の発展とあいまって現在に至るまで広く用いられている。角度測定器として一般に用いられているものは経緯儀である。経緯儀は重力またはこれに垂直の方向を基準として整準し,この状態で付属望遠鏡を2点以上の目標に向け,その間の水平角を,また各点の鉛直角(高度角)を目盛盤上で読みとるものである。日本工業規格(JIS)では,目盛盤をバーニヤまたは指標で読みとるものをトランシットtransitといい,光学的な拡大装置を用いて読みとるものをセオドライトといって区別している。経緯儀の構造は,望遠鏡,水平軸,鉛直軸,鉛直目盛盤,気泡管等から構成される,鉛直軸に直角についている上板から上の上部機構と,鉛直軸,水平目盛盤,整準・求心装置等の下部機構から成り立っている。経緯儀には鉛直軸の構造により単軸型と複軸型がある。単軸型は,鉛直軸が直接に整準台に支持されているため鉛直軸の機械的な精度が高いが,目盛盤と鉛直軸を一体として回転できないので,任意目盛から測角を始めたり倍角法による測角を行うことができない。前者はおもに基準点測量などの精密測量用に,後者は土木測量のような比較的精度の低いものなどに用いられる。

 トランシットの分類としては,水平目盛の最小読取値およびバーニヤの個数によりA,B,Cのクラスが,またセオドライトについては最小読取値によりA,B,C,Dのクラス分けがJISで決められている。国土地理院では国の行う基準点測量用として,性能別に特級,1級,2級の分類をしている。現在,角度の数秒までを電子的に読み取りディジタル表示をしたり,電気信号として他に利用できる電子トランシットが開発されている。

長さ

距離測定は三角測量などの角測定に長さを与えるものとして重要な量であり,角度測定よりも古い歴史をもつものであるが,経緯儀の改良などに伴い角測定の精度が高まるにつれ,一部の例外を除き精密測量には用いられなかった。すなわち,比較的精度の低い工事用測量,地籍測量などには鋼巻尺等の尺物が広く用いられていたが,国家基準点のように高い精度の位置が必要な場合には角測量による三角測量方式が採用されてきた。しかし,1940-50年代における電子工学の発達に伴う電磁波測距儀の開発は距離測量の分野に大変革をもたらし,その測定の容易さ,正確さから,三辺測量やトラバース測量が従来の三角測量にとってかわるようにもなった。

 距離測量用として一般に普及しているものは繊維製ならびに鋼製巻尺である。繊維製には,細い針金を織り込んだ麻布製,麻と綿,またはガラス繊維と化学繊維を交織し目盛を施したものがある。これらは軽量,折れ曲がりがない,取扱いが容易であるという利点はあるが,湿度の影響を受けやすく伸び縮みがあり,精度の高い測量には適しない。鋼製巻尺は繊維製に比し精度も高く耐久性に富んでおり,建設工事用など比較的精度の高いものに用いられているが,温度や引張力に敏感に反応するため,使用の際に注意が必要である。巻尺の正確さを確保するため,繊維製巻尺については計量法で検定が義務づけられており,鋼巻尺については検量法で検定公差が,JISで種類,形状,寸法などが決められている。精密用巻尺としては線膨張係数の小さいインバール製巻尺がある。これは大規模な三角測量網に長さの単位を与えるための基線測量などに用いられる。

 光学的に距離を求めるものとしてタキオメトリーtacheometryの方法がある。測量用としては経緯儀と物尺を一対として用いるものが多い。すなわち測定長の一端に経緯儀を,他端に物尺を設置し,経緯儀により物尺の2点を見た角とスケール長から距離を求めるものである。この方式は精度も低く測量用としてはあまり使われていない。

 現在測量用として広く普及しているものはエレクトロニクスを利用した電磁波測距儀である。これには光を用いる光波測距儀と電波を用いる電波測距儀がある。光波測距儀は精度は高いが,長距離測定の場合には天候状況に左右されやすい。一方,電波測距儀は天候の影響は少ないが精度が低い。光波測距儀の原理は,光を強度変調して目標点に設置した反射鏡に向けて発射し,ふたたび測距儀に戻るまでの変調位相の遅れから距離を求めるものである。短距離型には発光ダイオードを,長距離型にはHe-Neガスレーザーが光源に用いられている。

 比高または高さの精密な測量には,ふつう水準儀と正確な目盛を持った標尺が用いられる。この測量を水準測量という。

 新しい方法では,人工衛星の発射する電波のドップラー効果を利用して観測位置を得るものや,電波星からの電波を2点で受信することにより2点間の距離,方向を求めるものがある。さらに新たに開発されているものに慣性測量方式がある。この原理は,移動物体の加速度を求め,2回積分することにより距離を求めるものである。実際には3軸直交したジャイロと3対の加速度計を用いることにより,三次元量を容易に求めるものである。

測量の分類

測量の分類には各種の方法がある。すなわち,測量範囲の大きさによるもの,測量方法によるもの,測量目的によるもの,測量機器によるもの,〈測量法〉(1949)によるものである。

 地球は回転楕円体に近いものであるが,測量の範囲が狭い場合には地表を平面として取り扱うことができる。このような測量を平面測量plane surveyといい,地表を曲率を考えた面として取り扱うものを測地測量geodetic surveyという。前者を小地測量,後者を大地測量ということもある。

 測量の方法による分類はかなり広く用いられる。そのおもなものは次のとおりである。

(1)三角測量triangulation 経緯儀による三角形の頂点の角を測量するもので,広域から細部に至る測量に用いられる。日本の骨格を決めるための1,2,3等三角点の位置は,明治以来昭和40年代に至るまでこの方式によっている。

(2)距離測量distance measurement 各種巻尺や電磁波測距儀を用いる直接距離測量と,光学的手段によるタキオメトリーの間接的距離測量がある。簡単な測量から地殻変動用精密測量に至るまで広い範囲で用いられている。特に,精度が良く軽量小型で操作の容易な光波測距儀が開発されて以来,従来からの三角測量方式に代わりトラバース方式が広く採用されるようになった。また1等三角点の位置を決定するような精密な測量には,三辺測量が三角測量に代わり採用されるようになった。

(3)三辺測量trilatelation 基準点により構成される三角形の辺長を直接測定するものであり,辺長が長いほど三角測量より精度の高い結果が得られる。

(4)基線測量base line measurement 三角測量に対して長さの単位を与えるものであり,精密距離測量である。古くはインバール製尺が用いられたが,現在ではこの測量はほとんど用いられない。

(5)トラバース測量traverse survey 角と距離を測定して位置を求める最も簡単な測量方法であり,細部測量に広く用いられる。電磁波測距儀の普及にしたがい広く用いられるようになった。

(6)水準測量leveling survey 水準儀と標尺を用いて高低差(比高)を測定する最も精度の高い方法である。高さの測定にはこのほかに,経緯儀を用いる三角水準測量trigonometric levelingや,気圧計を用いる気圧測高barometric levelingがある。

(7)平板測量plane table survey 平板,アリダードを主要器具として現地において地形図等を作成するものである。大縮尺の図を作成する細部の測量に広く用いられる。

(8)衛星測量satellite survey 人工衛星を用いて地上観測点の位置を求める方法で,星を背景として人工衛星の方向を求める写真観測法,人工衛星までの距離をレーザー光等で直接測定する方法,衛星の発射する電波のドップラー効果による方法がある。電波を用いる方法は現在各国で用いられており,特に密林地など互いに見通しのない地点の測量や,大洋上の船位の確定に利用されている(宇宙測地)。

(9)写真測量photogrammetry 空中写真や,地上写真の撮影,図化などをいう。地形図作成のみならず広い利用範囲をもっている。

 測量をその目的に応じて分類するものとして次のようなものがある。

(1)基準点測量control survey 各種測量の基準となる点を設置する測量をいう。三角点や水準点の設置のための測量がその例である。

(2)土地測量land survey 土地面積や境界の測量・図化や,計画にしたがった土地の細分,統合などをいう。

(3)地籍測量cadastral survey 人にはおのおの戸籍が存在するように,土地にもおのおの地籍がある。さらに,土地には所有者,地目などが付随するものであり,土地の境界(面積),所有者,所在地番,地目を求める測量を地籍測量という。地籍の結果は課税の対象となるものであり,すでに前2300年ころのエジプトにその記録があったといわれ,ローマ時代にも国家事業として地籍測量が実施されている。イギリスにおいても1085年にウィリアム1世による土地所有者,範囲,価値を記したドゥームズデー土地台帳が作成されており,スウェーデンでは1692-1702年間にポメラニア地域の地籍測量が平板を用いて行われた。フランスでは1791年に土地測量による地籍の確定法が議会を通過し,土地の境界は三角測量方式に基づくことが明記された。日本における地籍調査はそれぞれの時代の政策や制度と関連して行われている。7世紀後半から形成された中央集権的律令国家では,班田制を施行するための田図を作成している。班田制が崩壊して荘園が発生した中世では荘園領主,守護等が太閤検地として有名である。江戸時代にも全国の幕領について検地が行われており,検地帳には1筆ごとの地名,地目,面積,耕作者名などが記載されている。明治に入ると近代国家建設の基礎となる財政を確立するため地籍調査を実施し,1筆ごとの字,番号,地目,段別,所有者名を確認している。1931年には国土調査法が制定され,以後近代的な地籍調査が進められている。

(4)地形測量topographic survey 地形図を作成する測量を総称していう。地形図とは,地表面の起伏と地上の人工物,自然物をできるだけ完全に紙面上に縮尺表現したものであり,測量結果をそのまま表現したものといえる。したがってこのような内容の地形図は,各種の編集図や,土地利用図のような主題図などの基礎図として多目的に利用されている。地形測量の方法としては平板測量方式と写真測量方式がある。写真測量方式は広域を対象とし,縮尺が小さいほど有利であるが,使用機器は高価である。一方,平板測量方式は小域に適し,単価が安く,使用器具も安価である。

(5)路線測量route survey 道路,鉄道等の通路のほか,運河,用排水路,架空送電線等の線状構造物建設に必要な測量を総称していう。

(6)河川測量river survey 河川についての計画,維持管理などに必要な資料を得るための測量の総称で,地形測量,水位・水量観測,深浅測量,縦横断測量などから成り立っている。

 以上のほか,各目的に応じてトンネル測量,港湾測量,水路測量,市街地測量など多くの測量がある。

 さらに,法律による分類がある。これは〈測量法〉による分類で次の三つがある。(1)基本測量 すべての測量の基礎となる測量で,国土地理院が実施するものをいう。(2)公共測量 基本測量以外の測量のうちで,道路,建物のためなどの局地的測量または高度の精度を必要としない測量を除き,測量に要する費用の全部もしくは一部を国または公共団体が負担,または補助して実施するものをいう。(3)その他の測量 基本測量,公共測量以外の測量をいう。

 測量の分類にはここにあげた以外に,使用する機器により分類されるものもあった。すなわちトランシット測量,コンパス測量などであるが,現在ではあまり用いられていない。

須田 教明