6月11日に放送された連続ドラマ『わたし、定時で帰ります。』(TBS系)第9話は、平均視聴率10.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)だった。



 吉高由里子が主演を務める同作は、ウェブ制作会社・ネットヒーローズの制作4部で“自分らしく”働く東山結衣(吉高)の姿を通し、「なんのために働くのか?」「自分を大切にすること」「仲間を大切にすること」といったメッセージを発信。第8話は9.1%を記録していたが、今回は1.1ポイント回復し、4度目の2ケタ視聴率となった。

 第9話は、部長の福永清次(ユースケ・サンタマリア)から呼び出された結衣が、“かつて種田晃太郎(向井理)が福永の会社を辞めた本当の理由”を聞かされるシーンから再開。結衣と種田はかつて婚約者だったが、過労を心配する結衣と「仕事が大事」と言い張る種田はすれ違い、破局していた。しかし、福永によると、種田は結衣のために会社を辞めたという。

 福永は結衣に残業するよう提案しつつ、三谷佳菜子(シシド・カフカ)や来栖泰斗(泉澤祐希)など制作4部の面々をうまいこと丸め込み、サービス残業させ始めた。
見かねた結衣も、ついに残業をするようになるが、現在の婚約者・諏訪巧(KAT-TUN・中丸雄一)とのすれ違いが増えていく……という内容だった。

 以前から、インターネット上で「嫌なヤツ!」と言われていた福永だが、彼には鋭い観察眼があり、“丸め込める相手”や“どう言えば相手の心を揺さぶれるか”を把握する能力の持ち主だったことが判明。相手を気分良くさせながら操って、自分はいいとこ取りして、そうやってうまく渡り歩いてきたのだろう。つまり、ただの嫌なヤツではなく、相当なクセ者だったのだ。

 この展開に、ネットユーザーも「福永の能力は使い方次第ではいい上司になれそうなのに。恐ろしすぎる」「みんなが洗脳されてて、こんな上司が職場にいたらと思うとゾッとする」などと騒然。


 一方で、今回は結衣と巧の間の“溝”が広がってしまった。第8話の時点で、巧が種田の存在を気にしてかなりイラついていることは明白だったが、第9話では普段の穏やかさを取り戻していた。しかし、巧は“酔いつぶれた結衣を種田がおんぶして歩いていたこと”を知らされておらず、他者から聞かされてショックを受けた様子。その結果、放送終了間際には、巧から「結衣ちゃんとは結婚できない」という発言まで飛び出した。

 ネット上には結衣と種田の“復縁”を望む声も多いため、「これはいい流れ」「ようやく結衣と巧が別れて、種田さんと結婚エンドかな!」などと盛り上がってきたが、冷静に考えると、私は巧にも同情してしまう。種田は結衣の“元彼”ではなく“元婚約者”で、そんな2人が同じ職場で働いているというだけでもモヤモヤするのに、結衣には種田と共有している“秘密”も多い。
それを後から聞かされる巧の身にもなってほしい。

 でも結局は、結衣も巧もお互いに気を遣いすぎて、“腹を割って話せない関係”だったのかもしれない。結衣がいろいろと秘密にしていたのも“巧のため”だろうし、巧が映画をドタキャンされたときに“まだチケットは買っていない”と嘘をついたのも、“結衣のため”だとわかる。こういう気の遣い方は決して悪くないし、むしろかなり良いカップルだと思うけれど、実は気遣いがすれ違いを招くことって、カップルに限らず人間関係ではよくあることなのではないか。

 そのすれ違いに気づいて修復するための時間が、今の結衣と巧にはない。“人生はタイミング”といった言葉があるように、タイミングさえ違えばうまくいったかもしれない2人……。
ワーキングドラマとして見ていた同作だが、こんなふうに、恋愛や人生についても深く考えさせられる。
(文=美神サチコ/コラムニスト)