ここでよしりんは、自身の重要テーマである沖縄論に佐藤氏が噛み付いてきたと捉え、激高している。いわく<佐藤優が琉球新報(7月12日)にデタラメな記事を書いている><要するにこう言いたいわけだ。「小林よしのりって奴は、沖縄のことを本気で考えて行なっているのではなく、金と虚栄心を目的にやってる悪い人だぜ!」呆れた話だ。「国策捜査」で罪をでっち上げられたと言ってる奴が、人に濡れ衣を着せている!>などなど。
しかし、「SAPIO」といえば、よしりんだけではなく、当の佐藤氏も長期連載を持つ媒体。そこで佐藤氏を猛攻撃するとは、穏やかではない。
対して、佐藤氏は「週刊SPA!」(9月23日号/扶桑社)で反撃を開始。同誌での佐藤氏の連載の特別編「佐藤優のインテリジェンス職業相談」が舞台だった。この記事はあくまで「フィクション」という位置づけで、漫画家から誹謗中傷されたという「ラスプーチン」さんと、作品の売り上げ低下に悩む漫画家「大林わるのり」さんからの相談に佐藤氏が答えるというもの。
しかし、その内容は<読者に対する説明責任をどう考えているのか、編集長に釈明を求めるといいでしょう><あくまでも事実関係で相手をぎりぎり締め上げることです><わるのりさんが、現在の影響力を維持することは不可能です><漫画界と論壇界をコウモリのように渡り歩かれることをお勧めします>など、よしりんや「SAPIO」編集部への皮肉とも批判とも取れるものだった。渦中の佐藤氏を直撃した。
「私は今回の件を『論戦』とは意識していません。
佐藤氏の口ぶりは冷静だが、これは論戦などではなく、礼儀や論理など無用のケンカだと言っているようにも取れる。
「最初に撃ってきたのは向こう。西部劇の世界と一緒で、最初に撃ってきた側に、その要因となる事実関係の検証責任があるのです。さらに、私の言論に対して、小林さんはマンガという非対称な形で撃ってきた。ですから、こちらも『フィクション』という非対称な切り返しをしたわけです。そのほうが読者にとってもおもしろいでしょ?」(佐藤氏)
なお「SAPIO」編集部は、今回の件に関してノーコメント。
売れっ子同士のバトル、元気のない論壇・出版界にとっては福音では? と言うのは不謹慎か。
(荒井香織/「サイゾー」11月号より/佐藤優氏、ロングインタビューにつづく)
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