台風で堤防が決壊した鬼怒川の被災地周辺で、中国人窃盗団が混乱に乗じた悪質な「財宝狩り」をしているという。さらに、この窃盗団のひとりがミュージカル俳優として来日していた人物である可能性も浮上中だ。



 東日本を襲った豪雨で、茨城県・鬼怒川の堤防が決壊。水害の後、泥に覆われた自宅は水道・電気などのライフラインも復旧していないところが多く、道路にはガレキやゴミの山が散乱していることから、各地で渋滞も発生。被災者の行き来はままならず、5日が経過しても3,000人近くが避難したままだ。

 そこに付け入ったのが窃盗犯で、県警によると被災以降に「自宅を物色されて現金が盗まれた」などの被害届が20件以上。一部集落では「犯人は4~5人の集団で、中国語をしゃべっていた」という目撃情報から、中国人窃盗団の可能性が浮上してきた。ただ、被災直後から救援優先で本格的な捜査の着手に至っていないようで、現時点では不安だけが広がっている。


「地元のパトロール団に似た統一した服装をしていて、夜に活動していた」という情報が寄せられている中国人窃盗団については、さらに犯人のひとりが昨年12月に日本でミュージカルに出演していた中国人俳優ではないかという疑惑も聞かれる。「見た目がそっくりだった」とする女性は、たまたま都内で行われた公演を観劇していたため「同一人物だと思った。一瞬、目の錯覚かと思ったほどよく似ていた」と話した。

 その中国人俳優はアクションが得意で、独特のジャンプをすることで知られるが、女性が目撃した際も3~4人の仲間と民家から飛び出し、同じジャンプをしていたというのだ。

 犯人がその俳優であるかはハッキリしていないが、過去、摘発された中国人窃盗団では、別の職業で来日しながら、そのまま不法滞在して犯行グループ入りした例は枚挙にいとまがない。

 県警の話では盗難被害の大半が一戸建ての住宅で、財布や貴金属を盗まれており、その手慣れた犯行は「中国人窃盗団マフィアの手口とも思える」という。


「プロの窃盗団は、木登りができるとか泳ぎが得意とか、各々スキルのある者で構成されていることが多く、川が氾濫したときに救助のフリをしてボートで移動した例がある。万一、警察に見つかってもボランティアスタッフを装ったり、ひどいときは被災した観光客を装うこともある」

 そんな話を聞いた鬼怒川温泉の旅館経営者は、館内に大きな金の置物が取り付けてあることから「盗られるのが怖い」と避難しなかったという。被害は床下浸水で、ほかと比べて軽度ではあったが「暖房も水もダメ」という状況。それでも「離れることはできない」としている。この経営者によると「ほかでは、強引な営業をかける複数のリフォームが連続して押しかけてきたらしい」というから、水害以外の敵に悩まされている被災者があまりに気の毒だ。
(文=ハイセーヤスダ)