小池百合子知事が提出した宮坂学・ヤフー元会長を副知事に任命する人事案を、 東京都議会が9月10日、自民党も含む賛成多数で同意した。翌11日の内閣改造で、小池氏と蜜月の二階俊博幹事長が留任。
民間人の副知事は、石原慎太郎都政での作家・猪瀬直樹氏以来、12年ぶり。
「”民間の血”を入れたい小池氏にとっての悲願が、都官僚最高峰の副知事人事でした。上山信一・慶応大教授擁する『都政改革本部』を立ち上げたものの都庁内部で総スカンを食らった過去があり、人選には慎重にならざるを得なかった。宮坂氏なら自民党議員とも付き合いがあり、マネジメントの経験は十分。会議でタブレットを活用するなど新しいモノ好きの小池氏にとって、文句なしの人物でした」(都幹部)
小池氏は2017年衆院選で、自身が立ち上げた「希望の党」が失速したあたりから、自民党へのすり寄りを始めた。
急速に冷めていった側近・野田氏との関係
ポイントは特別秘書の野田数氏の切り離しだった。
「元自民党都議の野田氏は”都議会のドン”こと内田茂東京都連幹事長(当時)を毛嫌いしており、『都議会はブラックボックス』とこき下ろす小池にはうってつけの側近だった。16年7月の知事選、翌17年6月都議選での都民ファーストの会圧勝は、紛れもなく野田氏の功績。ところが衆院選で国政進出をちらつかせる小池氏に猛然と反発したために、二人の関係は急速に冷めていきました」(都庁担当記者)
それを契機にして18年1月、自民党からも信頼の厚い佐藤章・財務局財政課長を知事補佐担当部長に抜擢。野田氏に代わり議会対策を担うこととなった。
かといって小池氏の裏も表も知り尽くす野田氏を野に放つわけにもいかない。
かわって今年5月に特別秘書となったのが元副知事の村山寛司氏である。小池氏より2歳年上、最も入庁年次の古い多羅尾光睦副知事より6年先輩という重鎮秘書の誕生だった。
「村山氏は本流の財政畑を歩み、10年の築地市場移転予算成立の功績が石原知事に認められ副知事に。ただ、あまりに自民党と近かったため、石原氏から警戒され、4年の任期を待たず、わずか2年で退任させられています。つまりは未だ影響を及ぼすドン・内田氏に通じているというわけ。
副知事人事を巡っては17年10月、女性では史上2人目の猪熊純子氏を抜擢。女性登用をアピールしたのと同時に、父が公明党参院議員を二期務めた猪熊重二氏ということで、公明党対策も期待されたのだが、「明らかに実力不足で、職員からは『ハイヒールを履かせた人事』と揶揄されました。そこで今年6月、任期途中の猪熊氏をあっさりと切り、受動喫煙防止条例を差配した政策通の梶原洋氏を起用しました」(同前)
着々と進んだ自民すり寄りシフトの総仕上げが、宮坂氏だったのだ。
8月20日、後援組織「百乃会」のセミナーに二階氏を講師として招き、蜜月をアピールした小池氏。 横綱相撲で再選を果たすため、政策面は自らの意を汲む副知事と村山氏に任せ、お得意の”政局”に専念することになりそうだ。