どこにでもいるようなアメリカン・ハイスクール・ボーイのマーティと、親友で変わり者の科学者ドクが、タイムマシーンで過去や未来へトラベルし、ドタバタに巻き込まれて行く映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。PART2では、2015年10月21日にタイムトラベルしており、今年、その日を迎えることから、映画ファンの間では「映画で予想されていた2015年と実際の2015年の違い」を検証するなど、大いに盛り上がっていた。

世界中のファンは、記念すべき10月21日にマーティとドクがデロリアンに乗っているところを見たいと切望していたが、それがアメリカの人気深夜トーク番組『ジミー・キンメル・ライブ!』で実現した。

 番組で、司会者のジミーが「『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ファンにとって、今日は特別な日ですよね。マーティがドクと一緒に、未来である2015年10月21日にタイムトラベルしたのですから」と話すと、後方からスモークが立ち込め、同作のテーマソングが流れる。そして稲妻のような光線の中を年季の入った車型タイムマシーンのデロリアンが滑り出て、ステージ中央で停車。車からは主人公のマーティを演じるマイケル・J・フォックス(54)と、科学者のドクを演じるクリストファー・ロイド(77)が戸惑った表情で降りてくる。観客は総立ちになり、割れんばかりの拍手で2人を迎えた。


 「わたしの計算によると、ここは2015年だよ。未来の世界だ!」と感動するドクに、マーティは、「2015年? 空飛ぶ車とかあるんだろ? ちょっと怖くね?」と戸惑う。そこにジミーが歩み寄りながら、「え~、実は空飛ぶ車なんですけど、まだないんですよ。制作できてないんですよ」と教える。きょとんとした2人は、「お前さん誰だい?」と聞き、ジミーは「わたしはジミー・キンメルと申します。あなた方はわたしのトークショーの真っ最中にタイムトラベルしたんですよ」と冷静に答える。


 「お前さん、トークショーを持ってるのかい? ジョニー・カーソンはどうしたんだい?」と名司会者の名前を出すドク。ジョニーは05年に79歳で病死しており、ジミーがそのことを伝えると、ドクもマーティもショックをあらわにした。ジミーは、「まぁ、かなり高齢でしたしね。テレビ番組でこんなショックなことを知るなんて気の毒ですけど」と言い、マーティは「テレビ? テレビ番組に出てるってことかい? みんな、オレを見てるのかい?」と驚く。ジミーは「えぇ、みなさんご覧になってますよ。多くの人は明日、トイレ中に携帯電話で(YouTubeなどで)見るでしょうけど」と言い、どん引きする2人に、「聞こえは悪いですけど、そんなんじゃないんですよ。
結構、楽しいですよ」と説明するが、2人は理解できないという表情のまま。

 ドクは「それじゃ、空飛ぶ車は開発されていないということで。ホバーボードはあるだろう?」と、宙に浮くスケートボードは存在するかと質問。ジミーは、「ホバーボードはあるけど、そういうホバーボードじゃないんですよ」と回答。マーティは、「中東平和は実現したかい?」と聞くが、ジミーは渋い顔で「オー、ノーノーノー」と答える。と、次の瞬間、ドクがはっとした表情になり、「(メジャーリーグのシカゴ)カブスは決勝戦に進んだかい?」と聞き、実際今年カブスは、ニューヨークメッツとリーグ優勝決定戦をしたため、ジミーは「イエス!」と答える。


 マーティは納得いかないという表情で、「この30年間、何が発明されてきたんだよ?」と質問したため、「そうだねぇ。クロナッツが生まれたよ。クロワッサンとドーナツが合体した食べ物で、美味しいんだよ」と教えるジミー。マーティとドクはひそひそと「テクノロジーは、そんなに進んでないじゃないか」とぼやくのだが、そこでジミーがスマートフォンを取り出し、2人と一緒にセルフィーを撮影。スマホにびっくりする2人に、ジミーは「笑って~」と言い、3人は笑顔で写真に収まる。そして、ジミーは、「この時代では、大事な出来事があると、セルフィーで記録するんですよ」と言い、「これは最高の発明品でしょうね。
スマートフォンって言うんですけど」と説明。ドクはスマホを手にし、「携帯できるコンピューターということか。これがあれば我々物理学者は……」と難しい語りに入るのだが、ジミーが、「いや、みんなお互いにニコニコ絵文字を送り合うとか、そんなことしかしませんけどね」と言い、ジミーがスマホに入れているコンテンツで、ドクとゴチャゴチャともみ合う。

 そこで、観客席の男性が「一言いいかな」とメガホン片手に立ち上がる。それは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主題歌「パワー・オブ・ラブ」を作り、作品にカメオ出演していた歌手ヒューイ・ルイスで、観客は大喜び。ヒューイは、劇中オーディションでギターを弾いたマーティに対して、メガホンで「お前さんはうるさすぎるんだよ」と言う審査員役で出演していたのだが、今回もメガホンで同じ台詞を言い、観客を大いに沸かせた。


 スマホの話題が終わり、マーティは、「時計台はどうしたんだい?」と質問。ジミーは、「あぁ、あれ?かなり前に解体して、バッファロー・ワイルド・ウィングスってレストランになっちゃったんだ」と軽く回答。「(不良の)ビフはどうしているんだい?」という問いには、「あぁ、彼には今番組で働いてもらってるんだ」と、カリスマ的人気深夜番組司会者デイヴィッド・レターマンのステージマネジャーという設定でビフを舞台袖にスタンバイさせ、彼はにこやかに手を振っていた。マーティは「いや、あのビフじゃなくて。大金持ちでカジノのオーナーで世界を股にかけている……」と説明。ジミーは、「あぁ、その人なら大統領選挙に出馬してるよ」とドナルド・トランプのことだと誤解し、回答。

 マーティとドクは困惑を極め、ドクは、「もう1つの2015年の世界に来てしまったんだよ。不必要なテクノロジーにより人類が進化を止め、ビフは覇権を握っているという世界にだ」とステージマネジャーのビフを見つめ、観客席から笑いがあふれる。ドクはマーティに「1985年に戻り、問題点を改善して戻ってくる」と舞台を去りかける。ジミーは「車、どうするんですか? っていうか、未来を知っているのなら、わたしがどのように死ぬのかも知ってますよね……」と聞くと、ドクは真面目な顔で「イエス」と言い、「来週……母親たちに、子どもたちがもらってきたハロウィーンキャンディを全部食べちゃいなって言ったのがバレて、子どもたちにボコボコにされるだろうね」と予言。実はジミーは毎年ハロウィーンの後、「子どもが楽しみにしていたハロウィーンのキャンディを親が食べたと言ったら、子どもがどうリアクションするか」というホームビデオを募集し、番組で紹介し、悲しみで泣き叫ぶ子どもの姿を見ては「かわいい」「かわいい」と盛り上がっているのだ。ドクは、それに対して警告したのである。

 その後、ジミーはマイケルと座ってのトークを繰り広げたのだが、マイケルが『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』で登場した自動靴ひも調整シューズをNikeが開発し、16年には発売するんだとお披露目したり、最後まで大盛り上がりした。

 大手紙「USAトゥデイ」が、22日に『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』で登場した同紙をそのままコピーして特別版として発行するなど、まだまだ続く『バック・トゥ・ザ・フューチャー』フィーバー。監督のロバート・ゼメキスは、新作やリメイク版の製作はないと断言しているが、ネット上では、「あと、もう1作!」と切望する声が多く上がっている。

※画像はYoutubeより