今回のインラ、ジョイナーみたいな爪を振り回しながら力説してた

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、欧米豪ではアジア系へのゼノフォビック(外国人嫌悪)的な差別的言動が広まっている。欧米人は、アジア人の細かな見分けがつかないため、中国、日本、韓国だけでなく、早期の水際対策が功を奏して感染者増加のスピードを抑えているシンガポール・台湾・香港の人でさえも「新型コロナウイルス感染者だ」と見なし、暴行する事件まで起きている。

 感染者が急増している米ニューヨーク市に住むアジア系住民も、顔を見られた途端、あからさまに避けられたり、舌打ちされたり、「コロナは帰れ」と言われたりといった差別を受けているとSNSに投稿しているのが多く目につく。同地下鉄では、アジア系の乗客が暴言を吐かれたり、暴行されたり、消毒効果のない消臭スプレーをかけられるなどの事件も発生。今後ますますエスカレートするのではないかと懸念されている。

 そんなニューヨーク市のブロンクスで生まれ育ったラッパーのカーディ・Bが、現地時間3月22日に配信したインスタグラム・ライブで、アジア系住民に対する差別的言動をやめるように呼びかけたことが話題を集めている。

 カーディは、6100万以上のフォロワーを持つインスタのライブで、「お願いだからゼノフォビックするの、やめて」「理不尽な怒りを持つのはやめにしよう。アジア人への暴行が多すぎるよ。

本当よくない」と呼びかけ、「(差別する)理由をいろいろとつけてるけどさ」「こういう時こそ、ヘイトをやめて、うちらはみんな同じ人種なんだって気づかなくちゃ。(人間という)1つの人種なのだから」と熱く述べた。

 「神さまから見たら、うちらはみんな同じ。たくさんの思いやりを持って互いに接することができたら、神さまは早めに許してくださるはず。そしたら、このクソなウイルスを早く治癒できるようになるんだから」と、クリスチャンらしい発言も飛び出した。

 また、「中国はこの国(アメリカ)が(新型コロナ)ウイルスを持ち込んだって主張してるじゃん?  まぁ、この国には中国に借りがある人が多いからねぇ」と、あながち間違った説ではないという持論を展開。

「どんな人でもゼノフォビック・ジョークを、軽いノリで言ったりするよね」「でもさ、国を代表する人は、言っちゃいけないことだと思うの」と、新型コロナウイルスのことを「チャイナ・ウイルス」と呼んでいたトランプ大統領がアジア系住民へのゼノフォビックを助長していると非難した。

 続けて、「誰が中国とケンカしたい? 自問してみな」「たくさんの人が、中国に借りがあるわけ。中国はなんでも手掛けてるからね。服や靴、電化製品とか、すべてが中国から輸入されてるわけ」「中国人は愛国心が強いんだよ。国のために死ねるし」と発言。このまま差別が続けば、中国と欧米豪諸国が対立し、とんでもないことになってしまうと示唆した。

 カーディは、この前日のインスタ・ライブでも、中国政府が厳しく対応しているから、武漢市では感染者数が減っているのだと発言。「毎日、自宅での隔離措置を受けている(軽症の)感染者の家に行き、体温を測っている」「本当に厳しくやってる。でもアメリカ政府は『自宅にいなさい』って言うだけなんだよ?」と、中国の対策を評価。

 中国叩きをする人たちに対して、「中国はクレイジーなんだよ。すごくパワフルで。怒らせないほうがいい相手なわけ。

アタシは中国と問題起こしたくないし」「中国をディスるコメントがすごく多いけど、彼らは頭がいいし、行動力があるからね。アタシはケンカしたくない」と発言したのだが、これにアンチが過剰に反応。ネット上で、「カーディが中国に媚びてる」「いつから中国の広告塔になったんだ」「中国から、どんだけ金もらったの?」などとバッシングされる騒ぎとなり、カーディは「2週間前にYouTubeで(武漢の新型コロナ対策に関する)45分間のドキュメンタリーを見たわけ」「その番組を見てからアタシにケンカを売りな」とTwitterで言い放っていた。

 実はカーディ自身も人種をめぐって、理不尽な嫌がらせを受けたことがある。彼女の両親はそろって中米の出身だが、昨年インスタ・ライブで「『おまえは黒人じゃない』『アフロ系の顔してるけど、両親の肌の色は薄いし、黒人じゃない』とか言われて本当にうんざり」と吐露。「父方の祖母の肌は私の肌よりも濃い。

母方の祖母は真っ黒」と説明。「両親ともにカリブ諸国出身だから、黒人を含むいろいろな人種が混ざっている」と説明していたが、その表情は疲れ切っていた。

 アイデンティティを攻撃されたり、マイノリティとして差別を受けたりしながら育ったため、人種差別には敏感なカーディ。アジア系住民が受けている理不尽極まりない差別が増えていることに、苦言を呈さずにはいられなかったのだろう。

 カーディの発言はネットで拡散され、大手メディアも報じるようになった。だが、さすがに彼女ひとりの呼びかけだけで、ゼノフォビックに基づく差別を止めることは難しいだろう。

カーディに続いてほかのセレブたちも、アジア系住民への差別をやめようと呼びかけてくれることを期待したい。