北京オリンピック・女子マラソンで、野口みずき選手が欠場となり、「補欠解除」の状態となっていた森本選手に、あらためて白羽の矢がたったものの、体調などの理由から「辞退」。結局、2人だけの出場となったのは記憶に新しい。

ここでちょっと素朴な疑問。

「補欠解除」って、いつまでにしなければいけないのだろうか。そもそも「解除」はしなければいけないのか。
素人考えでは、「万が一のときに備えるのが補欠なのだから、試合開始直前まで解除しなくても良いんじゃ?」なんて気もするのだけど……。財団法人日本陸上競技連盟に聞いてみた。

「オリンピックのルールとして、補欠選手の制度は全種目共通で決まっています。
陸上の場合、代表として出場するには標準記録を超えているのが条件で、なかでもA記録とB記録の二つがあるんです」
たとえば、男子100メートルの場合、A記録が10秒21、B記録は10秒28と決まっていて、Aを突破した人が複数名いる場合、3名までが出場できる。また、Aは突破できないもののBは突破した人がいる場合、1名が出場できるのだという。
つまり、Aを突破した人が4人いた場合、全員登録できるものの、うち1名が「補欠登録」となる。この「登録期間」は大会毎に決められ、今回の場合は7月23日だったのだそうだ。

「これらは世界共通ですが、さらに、日本が選手を派遣する上でのローカルルールもあるんです」
これはJOCが決めていることだそうで、陸上の場合、選手団全体で「40名まで」という上限が決められているのだとか。人数の「上限」は、設ける国、設けない国が存在し、また、競技によっても違い、たとえば、水泳は上限がないのだと言う。

「つまり、陸上の場合は、全体で100名がA標準記録を突破したとしても、その中から40名しか出場できません。ちなみに、今回の場合、『補欠選手登録』は、マラソン選手だけだったんですよ」

では、なぜマラソン以外で補欠をつくらないのか。
「マラソンは冬で終わってしまうので、3月に男女3名ずつ代表を決め、男女1名ずつ補欠登録しました。本番まで半年くらいあるなかで、代表選手に何かあった場合に対応できるためです」
一方、他の種目は、6月末にすべて選考が終わり、本番までそれほど期間がないため、補欠は決めていないのだとか。

いよいよ本題。「補欠解除」はいつまでに行われるのか。

「7月23日に登録されたときに、マラソンの場合、4名まで登録できますが、3名までしか出場できないので、結局、ムダになってしまう。本来なら、1日前まで引っ張れるのですが、40名という登録枠が決まっているだけに、マラソンで4名登録してしまうと、他の種目で出場できる枠が減ってしまうんです。そこで、23日に登録した時点で『解除』としています」
補欠をエントリーしたところで、現地に行く費用的な問題は当然あるわけだが、それ以前に、「40名」という枠の問題があるため、これまでも補欠が現地まで行ったことはないのだそうだ。

今回の女子マラソンで、「せっかくの1つの貴重な枠がムダになった」という声は多い。私自身、強く感じていたことだが、国ごと、競技ごとのルール、人数の上限など、様々な問題があったのでした。
(田幸和歌子)