日本には読み方の難しいもの、珍妙な響きのものなど、不思議な地名がたくさんある。そんな1つ、「野口五郎岳」を知っていますか。


地図帳などで目にするその名前に、思わず大きく反応してしまったことのある人もいるかもしれない。

インパクト大の名前だけど、改めて、その由来って? そもそもどんな山なのか そして、あの歌手とのかかわりは? 長野県大町山岳博物館に聞いた。

「野口五郎岳は、北アルプスのいわゆる『裏銀座』縦走路に位置する、標高2924メートルの山です。この名の由来は、大町市西部の『野口』という集落から、山容をよく見ることができること。そして、ごつごつとした山体を表現する『ゴーロ』という言葉が転じて、当て字として『五郎』と称されたこと。その2つが複合して『野口五郎岳』と呼ばれるようになったといわれています」

北アルプスにはこのほかに、「黒部五郎岳」(2840メートル)という山も存在するが、この山もやはり山体がごつごつしており、「富山県の黒部にあるごつごつした山」という意味合いから、「黒部五郎岳」と称されるようになったと言われているのだそうだ。


ところで、歌手・野口五郎とのかかわりって? この山からとった芸名とも聞くけれど……。
「こちらを訪れた方などから、お問い合わせで、歌手の野口五郎さんとどういう結びつきがあるのかといったことはよく聞かれます。ご本人ではなく、レコード会社のアシスタントディレクターの方が黒部五郎岳とともに候補に挙げていて、どちらか尋ねたところ、『芸名にするなら高いほうを』と選んだと聞きますが……いずれにしろ、山の名前として『野口五郎岳』が先に存在していたことだけは間違いなさそうです」
平成19年12月21日には、ある番組の取材で、この大町山岳博物館に歌手・野口五郎が実際にやってきて、芸名や由来について語られたということもあったそうだ。

実際に野口五郎岳を訪れる際の見所は?
「野口五郎岳のある『裏銀座』縦走路は、燕岳~槍ヶ岳の『表銀座』縦走路とともに多くの登山者に愛されています。華やかな表銀座縦走と比較すると、一見地味ではありますが、お花畑と野生動物の楽園、黒部源流に囲まれた高原・雲ノ平など、ルート上の見所は数多く、アルピニストの根強い人気を維持しています」
標高2870メートルの地点には、山小屋の「野口五郎小屋」もあり、7月上旬から9月下旬まで開設されている。

これからは野口五郎岳のベストシーズンだ。

(田幸和歌子)