万華鏡って仕組みがわかっても面白いんですよねえ。
あの鏡の入った筒を覗き込むと、とにかくまわしてしまう。
景色がコロコロ変わるのが楽しくて時間を忘れてしまう。
静でありながら、動がある、カラフルな世界はものすごく心を刺激してきます。

この万華鏡感覚をくすぐってくるのが、東映とバンプレストの新作『京騒戯画(キョウソウギガ)』
監督は「映画ハートキャッチプリキュア!花の都でファッションショー・・・ですか!?」の松本理恵。プリキュアのベースを押さえつつも、文字・背景・人物を渾然一体とさせた画面作りと、華やかな色使いが特徴的な作風がやたら印象に残る作品でした。
その東映が作るわけですから、プリキュア的な物が出てくるんだろうなと思うわけじゃないですか。
……全然違うよ!
東京での試写会(12/1)を見に行った編集さんいわく、司会の声優の上映後最初の一言が「ぽかーんでしたか?」だったそうです。はい、ぽかーんでした。
ぽかーんなんだけれども、終わったあとの感覚は「あっという間だったなあ」という爽快感と駆け抜け感。30分近くの作品ですが半分くらいに感じられます。
この心地よさ、なんなのかを幾つかあげてみます。

1・新・和風のお祭り騒ぎ
一番目が行くのが、色の使い方だと思います。

絵柄は基本今のアニメ調ですが、色がとにかくおかしい。時間の止まった京都が舞台なので背景は落ち着いた和風の日本の町なんですが、その上にかぶせるように常時原色チックな色が散りばめられているのです。なーんにも考えないで色見ているだけでトリップできます。
実のところはそのまま原色というよりも、ちょっとくすませた和紙のような色。けれども赤・青・黄色・緑・紫・オレンジと、意味があるのかないのか分からないまま飛び交いまくる画面は異様です。
出てくるキャラも、人・妖怪・仏となんでもあり。
けれどもそれが自然なのは、人間もまたド派手に動きまわるから。
これなんかで見たことあるなあと思ったら、キャラクターデザイン・作画監督が林祐巳。あっ、グレンラガンやサマーウォーズで原画やっていた方ですね。「動」パートはリアリティよりも動きが見えるキャラクターを、「静」パートでは耽美性あふれるキャラクターを配置しています。そりゃーにぎやかな感じになるわけだ。
 
2・マンガのコマがそのまま画面になるカット割り
遠くからじっとカメラで撮るような「静」パートと、目が付いて行かないくらいの「動」パートがあるんですが、特に「動」パートはカットの切り替えの数が尋常ではない。

離れたと思えば超接写、右から左から、時には同じ画面の中に2カット入ったりとめぐるましい事この上なし。
すっごく斬新に見えるんですが、これ考えてみたらアクションマンガの描き方と似ています。一人称視点と三人称視点が同時進行なので、カメラの切り替えを追うだけでものすごいスピード感に溺れちゃうんです。
あとは画面効果。マンガでよく描く集中線やキラキラの表現なんかもアニメでやっちゃいます。しかもカラーで。

画面賑やかだな!!
加えて、何かの伏線なのかわかりませんが、画面の隅でカラーのCGが時折くるくる回ります。ロード画面? 妖怪? わからん、一切説明なし。
ただ、それも含めて画面一つ一つが豪華絢爛。難しいコト一切考えないで、この画面のド派手さと動きだけでも見る価値ありです。
 
3・ハッタリのきいた世界観
これがシリーズ化するのか、30分で終わるのかわかりませんが、詰め込めるだけ詰め込んだ人と妖怪と仏の世界は、キャラの魅力よりも画面の情報量の多さに圧倒されることまちがいなしです。
いや、キャラちょうかわいいんですよ? 
ヒロインのコトとかぼく好みです。
結婚したいです。フィギュア欲しいです。薄い本読みたいです。
けれどもそれを忘れちゃうくらいに、画面のハッタリというかケレン味が強くて強くて、意識ぶん回されます。
なんだかわからないもの動きまわってるんだもん、何アレ、あそこで出てきたアレは一体なんなの!
ちなみに伏線を探そうと思ったら、きっと伏線だらけです。すごい物語的には複雑なことをやっています。画面一つ一つを検証したらきっと面白いでしょう。3本のアニメをいっぺんに見ている気分です。
同時に物語全部忘れてハッタリを楽しむだけでも面白いのがこの作品最大の見所。
だって万華鏡回すときに理由なんて考えないでしょう? 
こういう画面が作りたい、という積み重ねが山ほどあって、全部入れちゃった感じ。
多分この作品を見たら「このアニメみたい」というのがいろいろ連想されると思います。個人的には「フリクリ」「少女革命ウテナ」をまっさきに思い出しました。
主題歌を歌っているのも、ニコニコ動画で活躍していたTEPPAN。このあたりの自由奔放なフットワークの軽さも素敵。
実際に監督に聞いてみないとわかりませんが、今まで見てきた様々な作品の魅力を噛み砕いて自分のものに消化してしまい、それを古い・新しいの境界線越えてミキサーにかけて料理したんじゃないでしょうか。
カオス、って言葉で言うにはもったいない。多分緻密に計算されています。
だけどその緻密なのかカオスなのかわからない世界を駆けまわるのが、透明で巨大なハンマーもった元気ヒロインときたらねえ。
惚れてまうやろ。

新しい映像世界……なんて言葉はもう使ってられません。だって新しい映像いっぱいあるんだもん、今。
あえて言えば、ポストモダンの向こう側の、ポストポストモダン。そしてそれを全力全開で楽しんで作った結果のような作品です。
まずはお祭り騒ぎ、まさに戯画なこの作品を見て、映像に翻弄されてみてください。
結局これはどういう意味なんだろう、というのはじーっくりあとから考えよう。

先行放送は12月6日に行われましたが、見逃した人も12月10日から公式サイトで本編が配信されますので、お楽しみに。
声優さんファンも必見。ヒロインは戦闘する凛々しい釘宮理恵。ロリ博士は斎藤千和、縦巻きロールお嬢様が喜多村英梨で、ヒロインと一緒に駆けまわる兄弟が日高のり子と白石涼子。ね、ワクワクするでしょ! くぎゅうううう!
 
で、ですよ。
一番気になるのはこれってOVAになるの? とか続編ってあるの? なんですよ。
こんな魅力的な、人・妖怪・仏の世界がWEB配信だけ(テレビでも放映されない!)なんてもったいない。どうなるんでしょう?
まずは10日の本編放送を何度も見て、お祭り騒ぎに巻き込まれてこようと思います。
ところでニコニコのコメントで面白いものがありました。
「躁だ、京都へ行こう」
あっ、ぴったり。まさにそんな感じ
(たまごまご)