「MMR」がオリジナルメンバーで復活。
な、なんだってーーっ!?

4月23日、講談社が発表した新規事業「プロジェクト・アマテラス」の記者会見が行われた。


「『プロジェクト・アマテラス』はネットからの才能を発掘するべく、SNSと投稿サイトを組み合わせたプロジェクト型コンテンツ生成システムを構築。まったく新たな制作スタイルを提供」するらしい。

「このプロジェクトにはみっつの狙いがあります」
おれの頭に「?」マークが浮かんでいたところ、講談社運営責任者新事業プロジェクト部長の唐木厚がマイクを手に立ち上がった。

・いままで出版社が窓口を持っていなかったタイプの才能を多角的に発掘していきたい。
たとえば、小説やコミックなどはいままで公募で発掘してきた。でも、それだけじゃ不十分じゃないか。
小説投稿サイトを見て「なぜこういう作品が新人賞にきてくれないのか」と思うこともあるそうだ。
たしかに、いまネット、特にニコニコ動画などをきっかけに、各方面で活躍している人が多い(おれも、ライターになったきっかけはニコニコ動画のゲーム実況からだ)。
みんな、才能の無駄遣いをしている場合ではないぞ!

・ユーザー参加型のデジタルコンテンツを作成。
ニコニコ動画など、これまでのユーザー投稿型のサイトは、作品をつくれる人だけが注目され、スターになっていった。だけど、「プロジェクト・アマテラス」では、応援、コメント、リクエストも含めて創作活動と考えて進めていくそうだ。
・新たなるプロモーション手法の開発。

「いまのプロモーション方法はすでに確立しています。書店には平台や棚がある。店員がPOPを書く。新聞には書評欄もあり、著者はサイン会を開く。これらをデジタルで行うことは難しい」
デジタルコンテンツは、つくってからどうやって読者に届けるか、がまだまだ発展途上。
「大きなイベント会場だと思ってください。
運営側もはじめてのイベントなので、手探りの部分が大きいと思いますが、失敗することも含めて、これからのデジタルコンテンツの将来に必ず役立ちます」
「プロジェクト・アマテラス」はこれから先、どのようなプロモーション方法があるのかを実験する場でもあるそうだ。

「プロジェクト『百鬼夜行』ネクストジェネレーション」
京極夏彦の代表作「百鬼夜行(京極堂)シリーズ」。このシリーズで舞台になっているのは、昭和27年ころ。京極夏彦がいうには、妖怪が登場可能な年代がギリギリこのころまでだったから。でも、現代でも妖怪は成り立つのじゃないか、いまの日本を舞台にした「京極堂シリーズ」もありえるかもしれない、ということからはじまったプロジェクト。
決まっているのは現代が舞台、主人公は京極堂(中禅寺秋彦)ということだけ。
それ以外のことはユーザーから募集する。
「京極堂の性別、どういう性格か、決めセリフはあるのか……。キャラクターイメージを募集して確定します」
えっえー、つまり二次創作!? そんなのアリなのだろうか。
「このプロジェクトの着地点は、京極夏彦さんに現代版の『京極堂』をつくってもらうこと。ユーザーは編集者の役割をします」
えっええ~! 公式だった!「編集」という仕事を知ってもらうためのプロジェクトなのか。
もひとつ、京極夏彦のデビュー作「姑獲鳥の夏」のテキストデータを無償公開する、「プロジェクト『姑獲鳥の』」。
「自由に電子書籍をつくってくれ!」ということだ。
ガラケーで見やすいように編集するのもあり、ルビをふるのもあり、挿し絵を募集するのもあり!
「西尾維新『悲鳴伝』プロジェクト」では、作品内に出てくるキャラクター、アイテムイメージも募集するそう。


「MMRプロジェクト」
な、なんだってーーっ!?(2回目)。
週刊少年マガジンで連載(1990~1999年)されていた伝説のマンガ。読んだことはなくても、「なんだってーーっ!?」の台詞ネタやアスキーアートで存在を知っている人は多いと思う。おれもそうだ。

「MMR」は読者からの投稿をもとに、超常現象を科学的に解明していくという内容。もともと読者参加型のマンガということで、今回はそれをネット上で展開していくとのこと。
プロジェクト始動は5月21日から。オリジナルメンバーで連載再開と言っていたけど、指揮を執る都丸尚史(MMRメンバー、トマル!)によると、これからメンバーを集めていくらしい。「MMRリーダー、キバヤシの了承を得られるのかどうか……」と笑っていた。

ほかにはゲームデザイナー米光一成(エキレビ!ライターでもあるよ。「プロジェクト・アマテラス」にはサイトのインターフェイスや、アドバイスなどさまざまな形で協力している)が立命館大学で実際に行なっている授業を公開する「ゲームの教室」。
8000文字以内で自分の小説の一番読んでもらいたい部分だけを投稿していく新人賞「『ワルプルギス賞』プロジェクト」などがある。
現在プロジェクトを立案できるのは講談社や、その関係者だけ。将来的には一般ユーザーも自由にプロジェクトを立ち上げられるようにするのが課題のようだ。

4月24日現在、始動プロジェクト数は14件だけだが、2、3ヶ月の間に30件程度に増やし、50件程度のプロジェクトが進行していく形を取るそうだ。期間は最短3ヶ月のものもあれば2年かけているもの、無期限のものもある。ユーザーの反応次第で第2期がスタートすることもあるという。
「出版社ができる『あらゆる実験』をやっていく場にしたい。会員数何人、ページビュー何万を目指しているわけではなく、プロジェクトが成功するかが判断基準。ひとりでも才能がある人を見つけ出すことができれば成功だと思っています」と、記者発表会は唐木のことばで締めくくられた。

ニコニコ動画など、ネットで作品をアップしている人は「そのために用意された場」にはなかなか来なさそうなイメージがある。どういう素材を選んで、料理するか、自分たちで選ぶところから、作品作りははじまっているんじゃないだろうか。そういった人たちは、今後どういう風に、自ら進んで「プロジェクト・アマテラス」に参加するのだろう。ユーザーが自由にプロジェクトを立ち上げられるようになったらいいのになあ。
(加藤レイズナ)