今年のボジョレー・ヌーボー解禁日は、11月15日(木)。そのボジョレーに対抗するがごとく、同じ日に解禁される「麦のワイン」をご存じだろうか。


年によっては発売日を待たず、予約完売することもある麦のワインは、別名・悪魔のビール。神奈川県の地ビール屋「サンクトガーレン」が年に1度だけ販売する特別なビール「エル ディアブロ」(※スペイン語で悪魔の意)のこと。

ワインと名が付いているものの、正体はビール。以前コネタでも紹介したが、ワインのようにアルコール度数が高く、また、ワインのように長期熟成させて飲むのが名前の由来になっている。

2006年に発売され、最近ではボジョレーより「エル ディアブロ」の解禁を心待ちにしている人もいるほどだが、なんと今年は新たに天使のビール「ウン アンヘル」(※スペイン語で天使の意)も同時発売。ファンにはたまらないだろう。


悪魔と天使、その違いはなにか? 

まず、原料が違う。悪魔のビールは大麦麦芽が主原料の「バーレイワイン」というスタイル。一方、天使のビールは小麦麦芽を主原料とした「ウィートワイン」と呼ばれるもの。バーレイワインは、かつてブドウの栽培に適さなかったイギリスがフランスワインに嫉妬して造ったのがはじまりで、ウィートワインは1980年代のアメリカ生まれ。どちらもれっきとした歴史上の実在ビールだ。

もちろん、味も違う。
同社のバーレイワイン(悪魔)は、ホップを通常の約6倍も使っており、苦みや香りが強いのが特徴。ウィートワイン(天使)は、ホップの使用は通常の約2.8倍と控えめながら、小麦に由来する濃厚なとろみ感に個性があるという。

「悪魔のほうが濃厚な上に苦味も強烈。天使のほうが濃厚ながらもやさしい感じです」
と同社の担当者。原材料はいずれも麦芽、ホップ、水、ビール酵母のみ。それらを膨大な量使うことで極限までアルコールを高め、通常の6倍以上の熟成期間を経て完成させているのだという。


もともと悪魔のビール発売当初から天使のビールを作ることは考えていたそうで、
「“悪魔”という名前も将来的に“天使”と対にすることを想定して付けていました」
しかし、同社の通常ビールの熟成期間が2~3週間であるのに対し、これらのビールは3ヶ月~1年以上の熟成が必要。
「2種類となると2本のビールタンクが長い時間占有されるため、工場に余裕がないとできませんでした」
それが一昨年、工場を移転拡大。さらに昨年暮れにはビールタンクを増設したことから、ようやく製造に踏み切った。

商品は同社のネットショップで先行予約受付中(※お届けは11月15日以降)。いずれも1本1,050円。一般的なビールに比べると高価だが、原材料を膨大に使うため、かかっているコストも相当。
ワインだと思えばそれほど高くはないし、1年に1度のお楽しみと思えば、大いにアリな価格だろう。

解禁日には都内のレストランやバーでカウントダウンイベントも開催予定。瓶の場合はシャンパンと同じ瓶内2次発酵製法だが、樽生の場合は樽で2次発酵をおこなっているので、味わいも多少ことなるそう。興味のある人はぜひ飲み比べてみては。

今年も早々に売り切れ必至の悪魔のビール、そして新登場の天使のビール。あなたならどちらがお好み?
(古屋江美子)