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11週めの65回は視聴率が22.2%という高い記録を残し、連続テレビ小説「あまちゃん」(NHK、宮藤官九郎脚本)がじぇじぇじぇっ好調!

先週の12週は、初回から72回に渡って描かれた「故郷編」がついに終了しました。
アキ(能年玲奈)が北鉄の臨時列車に乗って北三陸を後にする土曜日72回のクライマックスに号泣した人は多いでしょう。

ナレーションが、夏(宮本信子)からアキに変わった瞬間もゾクッとしました。
また、72回だけでなく、木曜日70回にも感動回。泣きがいっぱいの12週目のおさらいの前に11週目について重大な考察を付け加えさせてください。

66回までの最高視聴率だった65回が、どんな話だったかというと、アキと春子(小泉今日子)との激しい母娘対決が繰り広げられたのでした。
ふたりの舌戦のおもしろさについては前回をどうぞ

やっぱり、母と子の確執って気になるのね〜と思いますが、その前の64回は例の花巻さん(伊勢志摩)のフレディ・マーキュリーの登場回です。
この濃密なネタで視聴者が離れることなく、増えたということに着目したい。
確実に朝ドラに新しい視聴者がついている、そんな気がしませんか?

その勢いにのって12週目「おら、東京さ行くだ!!」(6月17日 〜22日、67〜72回)です。
東京の芸能プロダクションに呼ばれたアキとユイ(橋本愛)が、アイドルを目指して東京に出ていこうとしますが、深夜バスでの脱出計画は、トホホにも、袖が浜を巡回するバスに乗ってしまったため失敗に終わります。

アイドルという職業に不信感をもっている春子や、町おこしに躍起になる北鉄の大吉(杉本哲太)や観光協会の菅原(吹越満)たちはふたりを北三陸に留まらせようとしますが、夏(宮本信子)はアキたちを応援します。

この夏の態度に春子は憤慨。25年前、自分が東京に行こうとしたときに快く送ってくれなかったことを根にもっているからです。快諾してくれないならないで、行くなとハッキリ言ってほしかったのに、明言を避け、見送りにも来てくれなかった母のことが春子の中ではずーっとわだかまっていました。

木曜日70回で、そのことについて、ついに夏が謝罪。春子の胸のつかえはやっとおります。

さらに土曜日72回では、見送りに来てもくれなかったと春子が恨みに思っていた夏は、実は浜から大漁旗を振って見送っていたことが判明。
あれから25年、アキが旅立つとき、夏は同じように浜から旗をふって見送るのでした。いやあ、この場面はじわっときました!

「あまちゃん」って、笑いが多い分、よけいに感動シーンに不意を打たれるんですよ。笑って笑ってカラダがリラックスしているので涙腺も緩みやすくなっているんですね。
そして、感動の見送りシーンに大変深いものも感じました。

夏が見送っていたことを、当時、春子は気付いていませんでした。それはちょうど大吉が話しかけてきて、うざいと思った春子が席を立ったから。
ちょっとしたボタンの掛け違いによって、25年間も母娘にわだかまりを抱かせてしまったなんて、まったく大吉、ろくでもねーことしかしねーなって感じです。
そして25年後、今度は吉田(荒川良々)が!

25年前と同じように、電車に乗ったアキに話しかけます。
が、今度はすんでのところで、吉田の意識がほかに移り、アキは浜から旗を振っている夏に気付くことができました。
ホッ。そして感動。号泣。
これって、ほんの少しの違いで未来は大きく軌道を変えるというふうに解釈できますよね。

以前、「あまちゃん」の現実とのパラレル性について書きましたが、
このシーンも、違う道の可能性を提示しているように思ってしまいました。
繰り返す歴史については、アキと春子、ユイとユイのママよしえ(八木亜希子)は、どちらも母がアイドルやアナウンサーを目指していたものの志半ばで断念し、主婦の道を歩み、その娘がアイドルを目指すというところに色濃く感じますが、
夢をかなえようと旅立っていく娘たちの未来は、この先「東京編」で描かれることになります。


とはいえ、道は険しそうで、最初の試練として、ユイの父・功(平泉成)が出発の朝、倒れてしまい、ひとまずアキだけが東京に行くことに(72回)。
ユイは、これまでずっとがむしゃらにすべてをアイドルへの道に注ぎ込んでいたから、倒れた父をそのままにして東京に行ってもおかしくないのに、それをしないところが印象的でした。朝ドラの良心を感じます。

気になるユイパパ。ユイの出発前、足立家の晩餐で「頭痛い」発言があったため、何かあると多くの視聴者が思っていたところ(71回)、案の定・・・という。
しかも、土曜日72回、リアスの場面で、功のポスターがちょっと長めに映り込んでいるんですよ。

連続ドラマを次回へ次回へと引っ張っていくためには、わかりやすい伏線は重要です。

月曜日67回で、ユイには修学旅行で東京に行く機会があったけれど、風呂場で転び骨折して行けなかったという話が登場したのは、ユイはちょっと運のない子という暗示なのかなあ・・・。
逆にアキには可能性が暗示されます。同じく67回で、自分たちの動向を追うヒロシ(小池徹平)を迫真の演技で撒こうとして、「女優になれる」とユイに褒められるのです。
さらに、春子は、アキは北三陸のみんなに好かれたと指摘、アキ本人は変わってないがみんなが変わったからだと言います。それがアキのもつ特別な能力なのでしょう。

アキの自己申告によると、東京での彼女は、基本丁寧語、ネガティブなポエムを書き、木や草に話しかけ、歩く速さが1.5倍になるなど、故郷編では見ることのできなかった面(これもある種の特殊能力)があるらしいですが、今週13週「東京編」にはそういうところが登場するでしょうか。

既にアキによる次週予告が奇妙でした。
不意打ちの自己紹介 ゆるぎない階級制度 奈落と呼ばれるふきだまり 自己紹介に次ぐ自己紹介・・・という単語の羅列(しかも不穏)が、エヴァンゲリオンのミサトさんによる予告編みたいで、でも最後は「ユイちゃん大事件です。以上」という高嶋政伸のナレーションかと思うような締めでした。

13週「おら、奈落に落ちる」。
まさかの「純と愛」みたいなダークゾーンに突入だったら、じぇじぇじぇ ですが、はたしてどうなる、「東京編」!? 繰り返される自己紹介にも期待!
(木俣冬)

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